サンパウロ州で経済活動制限措置が解除、本格的な経済再開へ

(ブラジル)

サンパウロ発

2021年08月20日

ブラジルのサンパウロ州政府は8月17日、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として約1年4カ月続いた経済活動への制限措置(2020年3月22日付州政令64881号)を解除した。ソーシャルディスタンスの確保やマスク着用などの感染予防措置は引き続き求められる(注1)。これは、2021年7月30日付州政令65897号の公布を受けたもの。同政令によると、経済活動への制限措置を8月16日までとし、翌17日から解除するとしている。

制限措置の解除により、具体的には、州内のレストランやバー、ショッピングセンターなどの商業施設の収容人数が80%から100%に引き上げられた。また、これまで営業時間は午前6時から翌日午前0時までとされていたが、営業時間の制限も撤廃された(2021年7月30日記事参照)。

また、8月16日に、サンパウロ州政府のワクチン接種スケジュールが全て完了した(2021年7月15日記事参照)。同接種スケジュールは、18歳以上の対象者に少なくとも1回目のワクチン接種を行う目標に向け、同州政府が年代別のワクチン接種スケジュールを設定していたもの。

この結果、8月16日時点で18歳以上の対象者で少なくとも1回目の接種を受けた人の割合は、18歳以上の同州人口の91.2%に達した。これは州全体の人口の69.7%に相当する。

ブラジルでは、新型コロナワクチン接種を1月17日に開始しており(2021年1月25日記事参照)、7カ月で同州ワクチン接種スケジュールを完了したことになる(注2)。こうしたワクチン接種の普及は、同州の集中治療室・一般病床の占有率低下、新規死亡者数の減少につながり、経済活動の本格的な再開に向けた重要なポイントの1つとなった。

他方で、汎米保健機構(PAHO)のジャルバス・バルボーザ事務局長補佐(注3)は8月17日付の現地紙「バロール」のインタビューで、サンパウロ州などの経済活動制限を緩める動きついて、「大きく制限を緩和することはデルタ型変異株の急速な拡大につながる可能性があり、緩和すべきタイミングではない」と述べている。実際、デルタ型変異株への懸念は徐々に広まりつつある(2021年8月13日記事参照)。

経済活動制限を緩めることに対して慎重な意見もある一方で、サンパウロ商業協会(ACSP)は4月13日付の公式サイトで、ACSPとサンパウロ州商業会連盟(FACESP)は共に、サンパウロ州のジョアン・ドリア州知事に対し、「1年以上にわたる経済活動への制限措置は州の経済、社会、人々の精神面への大きなダメージを与えている」との懸念を伝えたと発表していた。具体的には、失業者の増加、企業の資金減少と負債増加、サプライチェーンの混乱、オンライン販売との競争激化などを具体的な問題に挙げており、経済活動宣言が長引いたことで、厳しい経営に直面する企業の声も多い。

(注1)公共の場でのマスク着用などを義務化する2020年7月2日付法律第14019号や2021年7月30日付サンパウロ州政令第65897、2020年6月29日付サンパウロ州保健局 決議第96号などによるもの。

(注2)今後、17~12歳を対象にワクチン接種を行っていく。

(注3)2015年7月から約3年間、国家衛生監督庁(ANVISA)長官を務めた経歴がある。

(古木勇生)

(ブラジル)

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