7月の米小売売上高は2カ月ぶりの減少、サービス消費への移行が継続
(米国)
ニューヨーク発
2021年08月23日
米国商務省の速報(8月17日付)によると、2021年7月の小売売上高(季節調整値)は前月比1.1%減の6,177億ドルと、2カ月ぶりの減少になった(添付資料表参照)。減少幅はブルームバーグがまとめた市場予想の0.3%減を上回った。なお、6月の売上高は前月比0.6%増(速報値)から0.7%増に上方修正された(関連ブラック ジャック トランプ)。
自動車・同部品、無店舗小売り、衣料などが押し下げ要因に
業種別にみると、自動車・同部品が前月比3.9%減の1,267億ドル、寄与度マイナス0.83ポイントと全体を最も押し下げた。世界的な半導体の供給不足が続き、生産能力が需要に追い付いていない状況が続いている。次いで、無店舗小売りが3.1%減の854億ドル(寄与度:マイナス0.43ポイント)、衣料が2.6%減の258億ドル(マイナス0.11ポイント)で減少に寄与した。一方、フードサービスは1.7%増の722億ドルと増加幅が大きかった。
海軍連邦信用組合(NFCU)のコーポレート・エコノミスト、ロバート・フリック氏は「小売売上高の落ち込みが予想を上回ったのは、サービス業界の再開に伴い、ほぼ確実に、財の個人消費が物からサービスへ継続的、かつ加速的にシフトしていることが原因」と述べた。一方で、新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大によって、サービス消費にどれだけ影響があるかは不透明で、デルタ株による感染者数が今後も増加すれば、2021年第3四半期の米国経済に悪影響を及ぼす可能性があるとみられる(「マーケットウォッチ」8月17日)。
また、民間調査会社コンファレンスボードが7月27日に発表した7月の消費者信頼感指数は129.1と、6月(128.9)より0.2ポイント上昇した。内訳をみると、現況指数は160.3(6月:159.6)で0.7ポイント上昇し、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は108.4(108.5)で0.1ポイント減少した。消費者信頼感指数は、2020年2月以来(132.6)1年5カ月ぶりの高水準になった。
一方、新型コロナのデルタ変異株による感染が全米で急速に拡大していることから、厳しい数値も発表された。米国ミシガン大学が8月13日に発表した8月の消費者信頼感指数(速報値)では70.2と、2011年以来、約10年ぶりの低水準になった。ダウ・ジョーンズの市場予想(81.3)を大きく下回り、2020年4月の、新型コロナウイルスによるパンデミック発生時の水準(71.8)も下回った。ミシガン大学の消費者調査部門のチーフエコノミスト、リチャード・カーティン氏は「消費者は、今後数カ月の間に経済のパフォーマンスが低下することを正しく理解しているが、ネガティブな経済評価の異常な上昇は、主に『パンデミックが間もなく収束する』という(消費者の)期待の喪失による、感情的な反応を反映している」と指摘した(「CNBC」8月13日)。
(樫葉さくら)
(米国)
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