EU、アフガニスタンからの移民流入を警戒
(EU、アフガニスタン)
ブリュッセル発
2021年08月26日
欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は8月24日、アフガニスタン情勢を議論したG7首脳会議(G7首脳会議、ブラック ジャック)の後、共同で記者会見に臨んだ。ミシェル常任議長は会見冒頭の声明で、EUとして「移民の流入を管理し、EUの国境を守る決意」を表明した。
2015~2016年に移民・難民危機に直面したEUでは、大量の難民流入に対する懸念の声が上がっている。2021年下半期のEU議長国スロベニアのヤネス・ヤンシャ首相は8月22日にツイッターで、「EUはアフガニスタンのために、人道目的の名目での移民回廊を設置するつもりはない。2015年の戦略的な失敗を繰り返してはならない」とコメント。これに対し、欧州議会のダビド=マリア・サッソーリ議長が同じくツイッターで同日、「議長国スロベニアは、アフガニスタンの人道上の危機について、EUの立場を代表して発言する立場にはない」と反論するなど、EU内部でも見解の相違が表面化している。
人道的支援と開発支援を明確に分離
フォン・デア・ライエン委員長は声明で、アフガニスタン国内で避難を余儀なくされている人々の8割が女性と指摘し、女性や子供など弱者の権利が脅かされている中で、EU予算から拠出する、アフガニスタンに関する人道的支援の増額を提案する意向を示した。2021年の人道的支援の額は5,000万ユーロ規模を予定していたところ、欧州委としてはこれを2億ユーロ超に増額したい意向だ。会見では同委員長は、人道的支援と、開発支援の明確な分離を強調した。開発支援に関しては、女性の権利をはじめとする基本的人権の尊重の確保など、厳格な条件に基づいて今後検討するとし、今後7年間で10億ユーロを計上していた同国へのEUの開発支援は現状、全て凍結していると述べた。
タリバンとの対話(EU、ブラック ジャック web)について同委員長は、人道的支援や安全な国外退避など必要な措置を実行する上で必要な管理的な対話と、政治的な対話とは完全に分けて考える必要があるとし、後者の中でも、政権の承認は現時点では「全くテーブルに上っていない」と否定した。ミシェル常任議長も「新しいアフガニスタン当局とどのような関係を構築するか判断するのは早すぎる」と述べた。
(安田啓)
(EU、アフガニスタン)
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