欧州委、2035年までに全ての新車のゼロエミッション化提案
(EU)
ブリュッセル発
2021年07月16日
欧州委員会は7月14日に発表した環境対策政策パッケージ「Fit for 55」(関連ブラック ジャック やり方)で、乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則の改正案を発表した。改正案では、ゼロエミッション車への移行を加速させるため、新車のCO2排出量を2021年比で2030年までに55%削減、2035年までに100%削減という目標を設定した。規則案に基づけば、2035年以降は全ての新車がゼロエミッション車となり、ハイブリッド車を含めて内燃機関搭載車の生産を実質禁止とする。2020年1月1日から適用している規則(EU)2019/631では、2030年のCO2削減目標を乗用車は2021年比で37.5%、バンは31%と定めているが、欧州委は、EU全体の温室効果ガス(GHG)排出量の約20%を占める運輸部門は「排出量が増加し続けている唯一の部門」であり、2030年までにGHGを2021年比で55%削減するには、乗用車・バンのCO2排出削減基準の厳格化が運輸部門全体からの排出削減の「主要な原動力」になると説明した。
欧州委は同時に、代替燃料インフラ指令の改正も発表した。現行の指令では、EU加盟国の代替燃料の充填(じゅうてん)や充電設備などのインフラ整備目標について具体性と拘束力がなく、加盟国間で取り組み状況に差があり、EUとしてさらに包括的に取り組む必要があるとして、同指令を加盟国に直接適用する「規則」に変更する。新規則案では、加盟国は電気自動車(EV)1台につき1キロワット(kW)の充電能力が必要として、EV登録台数に応じて目標設置数を算出。出力300kW以上の急速充電ポイントを主要高速道路上に60キロ間隔で、また、水素充填ステーションと大型トラックやバスなど電気重量車用の出力1,400kW以上の充電ポイントをそれぞれ150キロ、60キロ間隔で2025年までに設置することとし、2030年までに充電ポイントを350万基程度まで増やすことを目指すとした。
業界、内燃機関搭載車の実質禁止に反発も、代替燃料インフラ整備の新規則は歓迎
欧州自動車工業会(ACEA)は7月14日付の声明で、2030年までにCO2を2021年比で55%削減という新目標はメーカーにとっては「非常に厳しい」とし、また、特に充電ステーションなどが十分に整備されていない現段階で「内燃機関」を禁止するのは「合理的な方法ではない」と反発した。一方で、ACEAも拡充を繰り返し求めてきた代替燃料インフラ整備について、欧州委の目標数に懸念は残るものの、乗用車からバン、重量車についてまで加盟国に拘束力ある目標が課されることや、EU排出量取引制度(EU ETS)に道路交通燃料が含まれたことを歓迎した。
また、EUにおける自動車の主要生産国の1つであるフランスのバルバラ・ポンピリエコロジー移行相は7月15日、同国のニュース専門テレビ局BFMTVに出演し、同国の主要メーカーは2035年までに新車のゼロエミッション化という目標に向けて「準備ができている」と述べたが、「Fit for 55」発表で「全てが決まったのではない」と、ハイブリッド車の扱いの見直しなど、今後多くの議論がなされるだろうとした。
(滝澤祥子)
(EU)
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