議会が再生可能エネルギー拡大法案を可決
(オーストリア)
ウィーン発
2021年07月13日
オーストリア国民議会は7月7日、再生可能エネルギー拡大法案(Erneuerbaren-Ausbau-Gesetz、EAG)を与野党の賛成多数で可決した。これにより、連立与党である国民党と緑の党の公約(第2次クルツ内閣発足、ブラック)に盛った「2030年までに国内で生産される電力の100%を再生可能エネルギーで賄う」という目標達成のための法的枠組みが成立した。同年までに年間10億ユーロを再生可能エネルギープロジェクトに投資する。
レオノーレ・ゲベッセラー環境相(緑の党)は「EAGは2040年までにカーボンニュートラルを達成するための大きな一歩だ。オーストリアは欧州で100%の再生可能電力を生産する先駆者となる」と強調した。
EAGは、2030年までに国内で供給される電力の100%を再生可能エネルギー由来とすることを定めた。この目標を達成するため、27テラワット時(TWh)の電力を太陽光(11TWh)と風力(10TWh)、水力(5TWh)、バイオマス(1TWh)で生産する。これは、現在の再生可能エネルギー電力生産の50%に相当する。その他の計画として、未実施分の173の地域暖房プロジェクトに1億ユーロ、2024年までに年間1,500万ユーロをさらに追加支援する。グリーン水素やグリーンガスの拡大にも年間8,000万ユーロを投資する。また、野党・社民党との合意の障害となっていた低所得者の定義を拡大し、約55万世帯に対して再生可能エネルギーの年間負担額を75ユーロまでとすることも決まった。
同法の可決をめぐっては、6日に社民党との合意ができた。連邦産業院(WKO)のカールハインツ・コプフ総務会長は合意を歓迎するとともに、「再生可能エネルギーの生産能力を高めるために、貯蔵施設や揚水発電施設、送電網などの拡大が急務だ。100億ユーロの補助金で300億ユーロの投資が実行される可能性がある」と述べた。また、再生可能エネルギー業界は「膨大な投資プログラムが開始される」と歓迎した。一方、大手エネルギー企業は歓迎しつつも、「地域のエネルギー組合に補助金が多く分配されるのではないか」と危惧している。連邦労働院は「EAG法は多くの雇用を創出する一方、天然ガスの消費者は再生可能エネルギー由来の電力とガスの両方の負担を強いられることになる」と指摘した(オーストリア放送局7月6日)。
(田中由美子)
(オーストリア)
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