中間選挙で与党は下院議席数を減らすも、州知事選挙では11州で勝利

(メキシコ)

メキシコ発

2021年06月08日

メキシコ連邦下院の全500議席の改選、32州中15州の州知事選挙、全国1,923の市町村の首長選挙などから成る、憲政史上最大規模となる中間選挙が6月6日に実施された。投票率は52.24%(6月7日午後6時時点)に達し、大統領選挙を伴わない中間選挙の投票率としては、前回(2015年)の47.72%、前々回(2009年)の44.60%を大きく上回り、国民の今回の選挙への関心の高さが垣間見えた。

連邦下院議員選挙では、左派の与党・国家再生運動(Morena)が議席数を大きく減らし、単独では過半数を確保できない見通しとなった。ただし、与党連合(注)を組む中道の緑の環境党(PVEM)と左派の労働党(PT)の議席数を合わせれば、過半数を維持する。他方、野党で中道右派の国民行動党(PAN)、中道の制度的革命党(PRI)、中道左派の民主革命党(PRD)で組織された野党連合は、議席数を大幅に増やす見通しとなった(添付資料表1参照)。

連邦下院選挙とは対照的に、全国32州のうち15州で実施された州知事選挙においては、与党Morenaが11州で勝利し、野党連合は北部チワワ州と中央高原バヒオ地域のケレタロ州の2州のみで勝利できる見通しだ(添付資料表2参照)。進出日系企業が多い州では、ケレタロ州とチワワ州でPAN政権が継続、北東部ヌエボレオン州では新興野党である中道の市民運動(MC)の候補が勝利する見通し。バヒオ地域北部のサンルイスポトシ州では、与党連合のPVEMとPTの候補が勝利する見通し(同州ではMorenaが独立候補を出したものの敗北が濃厚)。州知事選挙ではMorenaが優位に立ったものの、首都メキシコ市の全16行政区で行われた区長選挙では、野党連合が躍進した。前回の2018年には14の区長選で勝利を収めたMorenaは、今回は半数の7行政区のみを制し、反対に野党連合が9行政区で市長の座を獲得した。

金融市場は好意的な見方

今回の中間選挙は、与党側、野党側の双方とも一定程度は満足する結果になっているが、完全な勝利とは言えない複雑な様相を呈している。金融市場は同結果を受け、通貨ペソ高、株高の方向に動いている。通貨ペソの対ドル為替レートは、6月4日終値(インターバンクレート、48時間もの、売り)の1ドル=19.947ペソから、7日の終値では19.812ペソまで上昇した。株価指数(IPC)も、4日終値の50,484.35ポイントから、7日終値では51,427.64ポイントに上昇している。この背景には、連邦下院議員選挙で与党連合が大きく議席を減らす見通しとなったことにより、上下両院で3分の2以上の賛成を必要とする憲法改正を、行政府や与党のイニシアチブで推進することは当面の間は困難になるとみられ、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール現政権が進めている前政権のエネルギー改革に逆行する法改正を、憲法違反の観点から司法が抑止する効果(関連ブラック ジャック カード)を当面の間は期待できると投資家が判断したことがあるとみられる。

(注)2018年の総選挙時には、Morena、PT、社会結集党(PES)が与党連合「共に歴史を作ろう(JHH)」を形成していたが、2020年末に同連合は解散し、今回の選挙ではMorenaとPTに加え、緑の環境党が与党連合を形成した。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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