反外国制裁法が成立、6月10日に即日施行
(中国)
北京発
2021年06月14日
外国からの制裁に対する中国の対抗措置を定めた反外国制裁法が6月10日、全国人民代表大会(全人代)常務委員会で可決され、成立した。同法は即日施行された。
第3条では「外国が国際法および国際関係の基本的な規範に違反し、さまざまな口実もしくはその国の法律に基づき、中国に対して抑止・抑圧をし、中国公民および組織に差別的な制限措置を講じ、中国の内政に干渉する場合」について、中国は相応の対抗措置を取る権利を有すると定めた。
対抗措置の対象となる主体(第4条)は「第3条に規定する差別的制限措置の制定、決定または実施に直接または間接的に関与している個人および組織」とし、国務院の関連部門はそれらを対抗措置リストに加える決定ができるとした。
上記の対抗措置リストに掲載された個人および組織以外の対象主体として、第5条では「対抗措置リストに含まれる個人の配偶者および直系親族」なども指定しており、これらに対しても対抗措置を取ることができるとしている(添付資料表1参照)。
具体的な対抗措置の内容として、上記の対象主体に対して「ビザの発給拒否、入国拒否、ビザの取り消しもしくは国外追放」や「中国内の動産、不動産およびその他各種の財産の差し押さえ、押収、凍結」などの措置を規定している(添付資料表2参照、注)。
なお、中国政府は外国への対抗措置としてこれまでに「信頼できないエンティティー・リスト」や「外国の法律および措置の不当な域外適用を阻止する規則」を制定してきた。
これらの規定について、中国政法大学の霍政訢教授は「国(全人代)が制定する『法律』ではなく、その下位に位置付けられる『規章・規定(各政府部門が制定)』であることから、制裁への報復措置も行政法上取り得るレベルの手段にとどまっていた」と指摘する。その上で、霍教授は「反外国制裁法の成立により、反制裁措置に対して関連の法律体系を改善した」と評価している(「環球時報」6月10日)。
また、霍教授は、同法立法の重要な意図は「中国の行政執法機関や司法機関に対し、権限を付与することで、将来行う制裁や反制裁措置に対して、立法上の保護措置を講じることだ」とし、国務院や最高人民法院などの機関は「付与された権限に基づいて、対応する行政法規や司法解釈を公布し、より具体的な法令体系を整備していくことができる」と指摘する(「環球時報」6月10日)。
(注)国務院の関連部門はそれぞれの職責と任務分担に基づき、第4条と第5条で規定した個人および組織に対して、実際の状況に応じて表2の中の1つもしくは複数の措置を取ることを決定できる。
(藤原智生)
(中国)
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