米食肉加工タイソン、温室効果ガス排出量ネットゼロ目標を発表
(米国)
シカゴ発
2021年06月17日
米国最大手の食肉加工会社であるタイソン・フーズ(本社:アーカンソー州、以下、タイソン)は2021年6月9日、2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出量をネットゼロにする目標を発表した。同社によれば、米国のプロテイン業界において排出量削減目標が承認(注1)された初めての事例になるとみられる。
同発表では、優先的取り組みの具体的な主要分野として、2023年末までにパリ協定に基づいて地球の気温上昇を摂氏1.5度に抑えるための排出量のベースライン(注2)を更新することや、2030年までに米国内事務所における再生可能エネルギーの利用率を50%に高めるための道筋を確立すること、現在500万エーカー(約2万平方キロ)で取り組んでいる持続可能な牛肉生産用放牧地を2025年までにさらに拡大すること、サプライチェーン全体で森林破壊のリスクを排除するための活動を2030年まで継続すること、などを掲げている。
タイソンのドニー・キング社長兼最高経営責任者(CEO)は「世界で最も透明性が高く、持続可能な食品会社になるという私たちの目標を実現するため、ネットゼロの目標は重要なステップだ」と述べる。この新たな目標の導入は、同社の2020年度プログレス・レポートの発表と同時に行われた。同レポートでは、同社が全ての事業活動において持続可能性に関する目標をどのように達成しているかを説明している。2020年の主な成果として、自社ブランドで使用する板紙の素材をバージン素材からリサイクル資材へ100%移行、2019年比60%増となる約520万ポンド(約2,340トン)の廃棄物埋め立ての回避、米国の食品会社としては初となる、牛肉のサプライチェーンにおける持続可能な生産方法を大規模に検証する作業の発表などが挙げられている。なお、今回発表されたネットゼロへの移行は、同社が2018年に掲げた「2030年までに温室効果ガスの排出量を30%削減する」という目標を拡大した内容となっている。
タイソンは、米国エネルギー省による全国的イニシアチブ(ベタービルディングス・ベタープランツプログラム)に参加しており、省エネ目標の設定、エネルギー管理計画の策定、年間進捗状況の追跡や報告などに取り組んでいる。
(注1)科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ(Science Based Targets initiative、SBTi)による認証。SBTiは、世界自然保護基金(WWF)、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアチブで、気候変動による世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ1.5度に抑えるため、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進している。
(注2)温室効果ガス削減の取り組みを行わなかった場合に想定される排出量。
(小林大祐)
(米国)
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