在中日系企業、日中間の人的往来の円滑化や輸出管理法などにおける規定の明確化を要望
(中国、日本)
北京発
2021年06月17日
中国に進出する日系企業などで構成される中国日本商会は6月16日、「中国経済と日本企業2021年白書」を発刊した。白書は、中国の中央・地方政府との対話促進を目的として、中国各地の商工会組織の日系企業(法人会員8,560社)が直面する課題の分析および解決のための建議(総数524件)をまとめたもの。最前線で中国ビジネスに取り組む会員企業などの約50人が執筆に当たり、中国日本商会調査委員会(事務局:ジェトロ北京事務所)が企画・編集などの取りまとめを行った。
今回で第12版となる同白書の主要な訴求点は「公平性の確保(特に予見性・透明性の向上)」に、重点分野は「新型コロナウイルス関連の問題」と「モノ・技術・データの越境・管理に関する問題」に設定された。前者では、新型コロナウイルスの感染抑制を目的とした規制の継続によって、日中間の人的往来が停滞していることを受けて、日本との直行便の早期再開および再開済み路線の増便、駐在員および家族のビザ取得に必要な招聘(しょうへい)状の迅速な発給などを要望した。後者では、2020年後半以降に相次いで施行された「信頼できないエンティティ・リスト規定(2020年9月19日施行)」「輸出管理法(2020年12月1日施行、中国で輸出管理法が成立、貨物、技術、ブラック)」「外国の法律および措置の不当な域外適用を阻止する弁法(2021年1月9日施行)」「外商投資安全審査弁法(2021年1月18日施行、)」などの法令について、定義や適用範囲、適用に関する判断基準の明確化を要望している。
また、例年、白書の建議の3つの柱として提起している「建議の3要素」は引き続き、「対外開放」「行政の規制運用・手続」「公平な競争」とした。「対外開放」については、外商投資ネガティブリスト(注)において制限・禁止されている項目が年々削減されていることを歓迎しつつ、インターネット音楽配信やコンテンツなどの分野を例に挙げてリスト以外の他法令でも外資の参入規制緩和を求めた。「行政の規制運用・手続」に関しては、行政手続きの簡素化、許認可の削減、制度の運用・解釈の統一や制度変更などの際の事前の十分な周知を要望した。「公平な競争」においては、独禁法における企業結合審査基準の明確化、政府調達において外商投資企業が中国企業と平等に参加できるようにすること、などを求めた。
(注)「外商投資ネガティブリスト」における外資の投資を制限・禁止する項目数は、2018年版リストが48項目、2019年版が40項目、2020年版が33項目と年々削減されている。このほか、海南自由貿易港や自由貿易試験区など、それぞれの域内に限定してより踏み込んだ外資参入規制緩和を行っているエリアもある。
(小宮昇平)
(中国、日本)
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