米アップル、中国にデータセンター設置

(中国、米国)

中国北アジア課

2021年06月02日

米国のアップルが中国の地方政府系IT企業の雲上貴州大数据産業発展(以下、雲上貴州)と共同で設立したiCloud(貴安)データセンターが5月25日、貴州省で正式に稼働した(「貴州日報」5月27日)。

アップルは2017年7月に貴州省政府とiCloud戦略協力枠組み協定を締結し、10億ドルを投じて、貴安新区にiCloudデータセンターを設立すると発表した。2018年2月からは、中国本土のユーザーに対するiCloudサービスは雲上貴州が運営を行ってきた。2018年5月にiCloud(貴安)データセンターの建設に着工し、このほど完成した。雲上貴州が運営主体となり、アップルが技術的サポートを行うという。

中国では、2017年6月に施行したサイバーセキュリティー法によって、中国国内で収集・生成する個人ブラック ジャック webと重要データについては、中国国内で保管するよう定められており(注)、アップルもこの規制に対応すべく、データセンターを開設したとされる。米国の電気自動車大手テスラも5月25日、中国で販売した車両のブラック ジャック webを保存するデータセンターを設置したと発表しており(2021年6月1日記事参照)、外資系企業が中国にデータセンターを設置する動きが今後も続いていく可能性がある。

中国西南部に位置する貴州省は、以前は交通環境に恵まれず、相対的に経済発展が遅れた地域だったが、近年は交通インフラも整備され、データセンターの集積地として注目されている。2016年には国家ビッグデータ(貴州)総合試験区に指定され、アップルのほか、ITのテンセントや通信機器の華為技術(ファーウェイ)、通信会社の中国移動、中国電信、中国聯通をはじめとした大手企業がデータセンターなどの拠点を次々と設置している。山地・丘陵地に囲まれ、夏は涼しく、冬は暖かいなど、データ管理に適した気候であることに加え、地元政府による電気料金の優遇措置などのインセンティブもあり、多くの企業が進出した。

2015年以降は、ビッグデータの専門展示会が開催され、2021年も5月26~28日に「中国国際ビッグデータ産業博覧会2021」が開かれた。初日の開幕式にはオンライン上で劉鶴副首相が出席し、「ビッグデータ産業戦略を推進し、『デジタル中国』の建設を加速させる」と述べるなど、貴州省のビッグデータ産業の発展が中国のデジタル化戦略の一端を担っていることがうかがえる。

(注)ブラック ジャック webの運営者に対し、中国国内で収集・発生した「個人情報」「重要データ」を中国国内に保存することを義務付けており、業務の必要により国外に提供する必要がある場合には、規則に従って安全評価を行わなければならないとしている。ブラック ジャック webに限らず、ネットワークに関わる多くの事業者(全てのネットワーク運営者)に対しても必要かは不透明。

(森詩織)

(中国、米国)

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