裁判所が改正炭化水素法の一部条項の適用を暫定的に差し止め

(メキシコ)

メキシコ発

2021年05月12日

メキシコのフアン・パブロ・ゴメス・フィエロ経済競争・放送・通信行政担当第2連邦裁判官は5月10日、同月4日に公布された改正電力産業法(2021年3月30日4月16日5月6日記事参照)の一部条項の適用を暫定的に差し止めることをエネルギー省に命じた。連邦司法審議会のウェブサイトで公開された文書によると、今回の命令は民間企業5社が提訴した庇護訴訟(アンパロ、注)によるもので、適用差し止めとなるのは、第57条の改正と改正施行令の付則第4条、第6条。市場での競争条件を平等に保つため、アンパロを提訴した事業者のみではなく、全ての事業者に対して適用が差し止めとなる。

改正された第57条は、国家の利益あるいは第三者の権利を保護するために、許認可が一時的に停止された事業者の施設の操業を継続する目的で、国営企業(石油公社PEMEX)に操業を引き継がせることを規定している。改正前の第57条は、民間の第三者に操業を引き継がせるという選択肢があったが、これを削除したことは、国営企業による独占を招き、民間事業者に対して憲法が保障する自由競争の権利を奪うとしている。他方、付則第4条は、法改正の施行日に「エネルギー省が定める貯蔵能力」という要件を満たしていない企業に対する許認可の取り消し、同第6条は、法改正施行日に炭化水素法が定めるあらゆる要件を満たさない、あるいは規定に違反する企業に対する許認可の取り消しを定めている。ゴメス裁判官は、炭化水素法の第4編が違反の度合いに応じた段階的な制裁を定めているにもかかわらず、改正施行令の付則に基づき一律に許認可取り消しという重い制裁を適用するのは、法律本体と付則の間の矛盾を招き、事業者に与えられた法の信頼性と確実性の原則を阻害すると結論づけている。

貯蔵能力要件などについては差し止めを認めず

アンパロを提訴した民間事業者からは、許認可取得要件として「エネルギー省が定める貯蔵能力」を追加する第51条III項、国防、エネルギー安全保障、国家経済にとって差し迫った危険が存在する場合の許認可の一時的停止を定める第59BIS条も適用差し止めを求めていたが、ゴメス裁判官はこれについては却下した。アンパロを提訴した事業者は現時点で許認可を申請しておらず、第51条の改正による権利侵害が証明できないこと、第59BIS条に関しては、下院審議で修正が加えられ、許認可の一時停止対象事業者に対して聴聞権が確保されていること(関連ブラック ジャック web)から、同改正による事業者の権利侵害が現時点では不確実なことを理由としている。

今後のプロセスとしては、5月14日に公聴会を開いた後、最終的な差し止め命令を出すかどうかを決定し、その後さらに公聴会を開いて対象行為(法律など)の合憲性についての判決を出す。

(注)行政府や立法府、司法府などの行為によって憲法が保障する国民や企業の基本的権利が侵害された場合、当該行為の差し止め、および無効を求める裁判制度。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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