バイデン米大統領、気候関連の金融リスクに関する大統領令に署名
(米国)
ニューヨーク発
2021年05月24日
ジョー・バイデン米国大統領は5月20日、経済政策、財政、金融監督に関係する当局の長に対し、政府財政や金融システムに及ぼしうる気候変動リスクの考慮を義務付ける大統領令に署名した。今後、気候変動が政府の財政や金融システム、投融資に対する脅威となりかねないとして、気候変動によって生じるリスクを評価し、その軽減策を検討することを求める。
関係閣僚への具体的な指示としては、以下の点などが含まれる。
- ブライアン・ディーズ国家経済会議(NEC)議長やジーナ・マッカーシー気候担当大統領補佐官に対して、財務長官や行政管理予算局(OMB)局長と連携の上、連邦政府プログラムや資産・負債に対する気候関連の財務リスクを特定し開示するための政府全体の包括的な気候リスク戦略を120日以内に策定すること
- ジャネット・イエレン財務長官に対して、金融安定監督評議会(FSOC)メンバーと協力して、金融システムに対する気候変動リスクの評価やその軽減策などを分析した報告書を180日以内に提出すること
- マーティ・ウォルシュ労働長官に対して、労働者の年金について投資会社がESG〔注〕の要因を考慮せずに運用してよいとした前政権の規則を見直すとともに、180日以内にその検討結果などを報告すること
大統領令を受けて、ブライアン・ディーズNEC議長は「現代の金融システムは、気候が安定しているという前提の下に構築されていたが、私たちがもはやそのような世界に住んでいないことは明らかだ」と語り、今回の措置の重要性を訴えた(政治専門誌「ポリティコ」5月20日)。
〔注〕ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取ったもの。これら3つの取り組みに配慮して事業活動を推進しているかどうかは、企業評価を測る1つの指標として使われている。
(宮野慶太)
(米国)
ビジネス短信 e8554cf91f39d330