税制改正に反対する街頭デモ継続、新型コロナ感染拡大の懸念も
(コロンビア)
ボゴタ発
2021年05月07日
コロンビアでは、税制改革(ブラック クイーン ブラック)に反対する全国規模の街頭デモが4月28日に呼びかけられた。一部暴徒化したデモ隊による略奪行動や公共バス、警察詰め所などへの破壊行動が相次ぎ、翌日以降も各地で街頭デモや破壊行動は継続している。これを受け、イバン・ドゥケ大統領は5月2日、国会審議中だった税制改革法案の撤回を発表した。それに伴い、法案を作成したアルベルト・カラスキージャ大蔵・公債相が辞意を表明し受理された。
その後も抗議行動は各地で継続しており、輸送や教育、保健関係など非常に多くのセクターがそれぞれの主張を掲げて主要道路の往来をふさぐかたちで街頭に出ている。一方、治安部隊との衝突で5月6日現在、合計24人の死者、89人の行方不明者、1,000人以上の負傷者が出たとする報道もある。死者や負傷者の多くは治安部隊の発砲によるものとされ、政府に対し過剰な鎮圧だと強い批判がなされている。
首都ボゴタ市ではバス網のトランスミレニオが時短運行となっているほか、主要道路の封鎖で生活物資や医療関連物資の流通にも影響が出始め、新型コロナウイルス感染の重症患者向けの酸素輸送が遅れているとも指摘されている。
ドゥケ大統領はデモ主催団体をはじめとする各セクターとの対話を開始するとしているが、それぞれの主張が非常に多岐にわたっていることから、合意による沈静化には困難が予想される。当地では、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年11月にも同様の全国規模での街頭デモが行われ、3カ月近くにわたって散発的に継続した。経済の低迷や失業者の増加、新型コロナウイルス感染収束の見通しが立たないなど、社会全般に不安・不満が拡がっていることで、活動が長期化すると懸念されている。
コロンビアでは3月末から感染者が急増し、新規感染者数も1日当たり1万~2万人を記録する感染第3波にあるほか、死者数も第2波で最多だった1日約400人を超える日が続く。ボゴタ市では集中治療室(ICU)占有率90%以上が続き、予断を許さない状況だ。街頭デモで人々が密集することで、感染状況のさらなる悪化も懸念される。
(豊田哲也)
(コロンビア)
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