IEA、2050年までのCO2排出ネットゼロに向けたロードマップを公表
(世界)
国際経済課
2021年05月26日
国際エネルギー機関(IEA)は5月18日に発表した「Net Zero by 2050」で、2050年までにエネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出をネットゼロにするためのロードマップを提示した(注1)。IEAのロードマップでは、新規の化石燃料供給プロジェクトへの投資を即時取りやめることや、二酸化炭素排出削減対策を行わない石炭関連工場への投資決定を行わないこと、2030年までに世界の自動車販売の60%を電気自動車にすること、2035年までに内燃機関車(乗用車)の新規販売を停止すること、2040年までに世界の電力部門における二酸化炭素排出のネットゼロ達成、2050年までに発電の約90%を再生可能資源由来にすること、などを求めている。
再生可能資源別にみると、2050年には太陽光と風力で発電の70%を占める。一方、総エネルギー供給における供給源では、現状5分の4を化石燃料が占めるが、2050年に5分の1に縮小するとの見通しを立てている(注2)。ファティ・ビロルIEA事務局長は「IEAの示した道筋は、大規模な雇用を創出し経済成長を押し上げるクリーンエネルギー投資の歴史的急増をもたらすが、その実現には一層の国際協力の下で政府が力強く信頼できる政策措置をとることが必要だ」と述べた。
IEAとIMFによれば、二酸化炭素排出のネットゼロ実現に向けたエネルギー投資額は、2030年までに年間5兆ドルに急増し、世界のGDP成長率を0.4ポイント増大させるという。また、民間および政府部門の支出増加はクリーンエネルギー部門(省エネ、エンジニアリング、製造、建築部門を含む)における雇用創出をもたらし、現在のトレンドが継続した場合に比べ、2030年の世界のGDPが4%高まると分析している。
IEAは、2020年以降、カーボンニュートラルを宣言する国は増加し、世界の二酸化炭素排出量の70%相当をカバーする規模になるものの、多くの宣言の下では短期的な政策が示されていないと指摘している。さらに、仮に各国がカーボンニュートラルを実現してもなお、2050年に世界で220億トンの二酸化炭素が排出されたままで、世界の気温が50%の確率で2100年に2.1%上昇する見込み。二酸化炭素排出削減の取り組みが遅れれば、2050年までのネットゼロ達成は困難になると警告している。
(注1)IEAによると、「Net Zero by 2050」は、2050年までのネットゼロのエネルギーシステムへの移行方法について、世界で初めて包括的に研究したレポート、とのこと。ファティ・ビロルIEA事務局長は「同ロードマップで提示した行程はグローバルな規模に基づくものの、各国は自国の経済発展度合いに応じた(ネットゼロ達成のための)戦略を立てる必要がある」として、「新興国よりも先に先進国がネットゼロを実現する行程を作成することを想定している」と述べている。
(注2)一部の化石燃料は、プラスチック、炭素回収を備えた設備、二酸化炭素を低排出にするための技術が不足している部門などで使用される。
(柏瀬あすか)
(世界)
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