米政権、新型コロナワクチンに関わる知財の保護放棄を支持
(米国)
ニューヨーク発
2021年05月07日
米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は5月5日、バイデン政権として、新型コロナウイルス用ワクチンに関わる知的財産の保護を放棄することを支持すると発表した。
タイ代表は発表に際して「政権は、知財保護を強く信じる一方で、感染拡大を収束させるべく、新型コロナワクチンの知財保護を放棄することを支持する」と述べた。ワクチンの知財保護をめぐっては、知財保護義務がワクチン製造の障害になっているとして、インドや南アフリカ共和国がWTOのTRIPS協定による保護義務の免除を提案しており、タイ代表はワクチンを開発した製薬大手企業と面談し、対応を協議していた(関連ブラック ジャック ゲーム)。
今回の発表に対して、米国研究製薬工業協会(PhRMA)は5日、「官民連携に混乱の種をまくもので、既に緊迫状態にあるサプライチェーンをさらに脆弱(ぜいじゃく)にし、ワクチン偽造を拡散させる」と批判的な声明を発表した。PhRMAは、世界規模のワクチン普及に向けて製造・輸出の増強が既に進行しているほか、COVAXファシリティー(注)との協力や、200以上の企業などと提携を結んでいるとしている。一方で、専門家は、ワクチン製造工程が複雑で、特別な設備やノウハウを要することなどから、ワクチン特許が放棄されたとしても製造が急激に拡大するとは考えにくいとの見方を示している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版5月6日)。
議会では、下院民主党議員110人が保護義務の免除を支持するよう求めていたのに対し、共和党は反対を表明している。マイク・クレイポ上院財政委員会少数党筆頭委員(共和党、アイダホ州)は、ワクチンの知財放棄によりワクチン製造能力が増加することはないと反発し、政権の決定は「自国の企業を支援する目的で米技術の獲得を積極的に狙う中国などの国を利する」とコメントしている。
USTRは今後、WTOでの条文交渉に積極的に関与する方針を示している。WTOでの協議は2020年10月に保護免除が提案されて以降、条文交渉の開始に合意できていなかったが、修正を加えた条文案が検討される見通し。WTOのオコンジョ・イウェアラ事務局長は、加盟国に対して事態の緊急性を強調するととともに、条文交渉の開始を促している。一方、タイ代表はWTOの全会一致ルールや事態の複雑さから、交渉には時間を要するとの見方を示している。次のWTO公式会合は6月8~9日に予定されている。
(注)新型コロナウイルスワクチンを複数国で共同購入し、公平に分配するための国際的な枠組み。詳しくは世界保健機関(WHO)のページを参照。バイデン政権のCOVAXファシリティーへの資金拠出計画については、ホワイトハウスのファクトシートを参照。
(藪恭兵)
(米国)
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