タイUSTR代表、初の米中閣僚級通商協議でバイデン政権の政策方針を伝達

(米国、中国)

ニューヨーク発

2021年05月28日

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は5月27日、中国の劉鶴副首相とバーチャル形式で会談を行い、両国間の通商関係について議論を行ったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。会談の中でタイ代表は、バイデン・ハリス政権が志向する「労働者中心の通商政策」や政権内で進行中の両国通商関係の見直し状況、その他の懸念事項について率直な議論を行ったとしている。しかし、議論の詳細には触れず、劉副首相との今後の協議に期待を示すと短く締めくくっている。

バイデン政権の発足以降、米中政府の高官が会談を持ったのは3月中旬に米国アラスカ州で行われた外交トップによる対面の会談()以来で、かつ通商関係を議題にしたものとしては初となる。両国の通商関係は、トランプ前政権時の2018年7月以降、米国が中国原産の輸入品の一部に追加関税を発動したことを皮切りに、結果的に双方の物品貿易の約7割に追加関税が課される関税戦争にまで発展した。また、関税戦争と並行して、トランプ前政権下では、安全保障上の懸念や人権侵害の疑いなどから、中国企業に対する輸出管理を厳しくするなど、対立の局面は広がっていった。その後、両国は2020年2月に、両国間合意の第1段階と位置付ける米中経済・貿易協定(関連ブラック ジャック トランプ)を発効させたが、相互に課している追加関税および厳格化された米側の輸出管理上の措置などの大部分は撤回されず、バイデン政権以降も残ったままになっている。

バイデン政権ではタイ代表を中心に、対中通商政策の見直しを進めているが、完了のめどは示されていない。なお、安全保障の面では、2021年2月に国防総省内に立ち上げられた中国タスクフォースが、6月中に国防関連の政権幹部に対して、政策提言を行う予定となっている。政権全体の対中政策について、国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル元国務次官補はスタンフォード大学のイベントで、中国に対して「関与と表現していた時代は終わりに来た」とし、今後の対中政策は新たな戦略的変数を組み合わせて実行に移され、「その中でも支配的なパラダイムは競争だ」と述べたとされる(「ブルームバーグ」電子版5月26日)。

(磯部真一)

(米国、中国)

ビジネス短信 12f06395823e2ad0