プーチン大統領の年次教書演説、新型コロナワクチン接種を呼びかけ
(ロシア)
欧州ロシアCIS課
2021年04月30日
ロシアのプーチン大統領は4月21日、クレムリンに隣接する展示場「マネージ」で年次教書演説を行った。新型コロナウイルスによる感染流行対策や保健衛生の改善、人口減少への対応、社会保障の充実、教育環境の整備など、前年と同様に社会政策の拡充に多くの時間を割いた(2020年1月16日記事参照)。また、雇用創出や中小企業支援といったビジネス環境のさらなる改善や気候変動にも言及した。
演説の冒頭でプーチン大統領は、国内で新型コロナウイルス感染者数は増加の一途をたどっていると指摘。拡大を防ぐ唯一の手段はワクチン接種だとし、国民に接種を強く呼びかけた。
社会・経済対策については、2020年には多額の予算を投じ、事業者の給与支払いに向けた優遇融資を通じて500万人もの雇用を維持したと成果を強調。一方、失業状態にある国民は依然として数多く存在しているため、企業に雇用創出のための投資を促す施策を実施するよう政府に指示した。中小企業支援に関しては、社会保険料の雇用者負担率を30%から15%に引き下げたと説明した。
世界で注目を集めている気候変動対策や環境汚染対策にも触れた。前者については「ロシアの科学力をもってすれば必ず解決できる」と強い自信を示し、二酸化炭素(CO2)を再利用する産業の創出やCO2排出量の削減、CO2排出の厳格な管理・監視体制の導入の必要性を強調した。後者については、クラスノヤルスク地方のノリリスクやイルクーツク州のウソリエ・シビリスコエなどで起こっている環境汚染(注)を挙げ、このようなことを二度と起こしてはいけないと強く語った。これを踏まえ、環境汚染対策としてa.環境に損害を与えた場合に企業に賠償させる法律の制定、b.生産者や輸入者に製品や包装のリサイクルを義務付ける仕組みの確立、c.環境税の導入などを提案した。
(注)ノリリスクでは2020年5月29日にディーゼル燃料が土壌や川に流出する事故が発生。ウソリエ・シビリスコエでは2010年まで操業していた化学工場からの有害物質を含有した廃棄物による土壌や地下水汚染が深刻である(「インターファクス通信」4月21日)。
(宮下恵輔)
(ロシア)
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