英金融の地位復権へ、ロンドン上場規則の緩和を提言
(英国)
ロンドン発
2021年03月16日
英国政府は3月3日、英国の上場規則に関する第三者評価レポートを公表した。上場規則については、2020年11月にリシ・スーナック財務相が、英国のEU離脱(ブレグジット)後の国際競争力を維持すべく改正を提言していた。
同レポートには、上場時の最低浮動株比率の引き下げや特別買収目的会社(SPAC)をめぐる規制緩和、取締役や創業者が上場後も経営支配権を維持できるよう「デュアル・クラス株式(議決権種類株式)」を取り入れている企業のロンドン証券取引所(LSE)のプレミアム市場(注)での上場を認めることなどを提言している。そのほか、目論見書の作成免除などを含む関連規則の見直しや、金融街シティの状況について、財務相が議会への年次報告を毎年提出することなども含めた。これに対し、英国金融行為規制機構(FCA)は歓迎の意を表し、2021年後半までに関連規則の制定を目指すとしている。英国大手フードデリバリーサービス企業のデリバルーは、ロンドン証券取引所での上場計画を発表した。これは、前述の上場規則緩和方針が要因としている(「フィナンシャル・タイムズ」紙3月4日)。時価総額が100億ドルに上る可能性もあり、大きな注目を集める。
SPACによる上場は米国で急拡大を続けており、米国SPACリサーチの調査によると、2020年の同手法による米国での新規株式公開(IPO)調達額は約834億ドルに達した。さらに、最近では欧州にもアムステルダムを中心に波及してきている。SPACは、買収を目的に設立された企業のこと。上場したSPACに買収されることにより、被買収側も通常のIPOと比べ、比較的短期間での上場が可能になるなどの利便性の高さが特徴だ。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で従来の上場プロセスが困難になったことも、拡大に拍車をかけたとされる。しかし一方で、ロンドン証券取引所グループのデイビッド・シュワイマーCEO(最高経営責任者)はこの過熱するトレンドについて、「投資家にとって良い結果とならない可能性がある」との警戒感を示している(「ロイター」3月5日)。
政府は今後、さらなる金融市場の規制改革の計画を示唆している。ブレグジットに伴い、資産・人材の流出()や、2021年1月における平均株式取引高でアムステルダムに欧州トップの座を奪われるなど、地位低下の兆候が見受けられるロンドン・シティの復権を目指す構えだ。
(注)株式発行企業に対し、上場に当たり通常より厳格な条件が課される市場。
(尾崎翔太)
(英国)
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