イスラエル、オーストリア・デンマークとワクチン共同開発に向け協議
(イスラエル、オーストリア、デンマーク)
テルアビブ発
2021年03月08日
イスラエル首相府は3月4日、オーストリアのセバスティアン・クルツ首相とデンマークのメッテ・フレデリクセン首相がエルサレムを訪問し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談したと発表した。
会談では主に、新型コロナウイルスワクチンの研究開発に向けた共同ファンドの設立などが話し合われた。ネタニヤフ首相はイスラエルが世界に先駆けて積極的に実施しているワクチン接種の状況と、ワクチン接種者に対する証明書(「グリーン・パスポート」「グリーン・パス」などと呼称、注)を活用した規制緩和政策を説明すると同時に、新型コロナウイルス感染拡大が今後も周期的に発生する可能性があることや、現在接種しているワクチンがどの程度の期間にわたって免疫の有効性を持続できるのか不確かなことなどから、継続的な新型コロナウイルス感染対策として自国によるワクチンの研究開発の必要性を訴え、3カ国による研究開発のための共同ファンド設立を提案した。
これに対して、イスラエル現地紙「ハーレツ」(3月4日)の報道によると、クルツ首相はEUのワクチン政策に満足しているとしつつ、より国際的な連携が必要だとして、ネタニヤフ首相の提案を歓迎。共同ファンドの下に、欧州とイスラエル双方に生産拠点を設けるなどの構想を提示したという。フレデリクセン首相は、同国もワクチン生産量の拡大を目指しており、臨床試験分野でもイスラエル、オーストリアとの協力を目指したいと述べた。
イスラエルでは、イスラエル生物学研究所(IIBR)をはじめとした複数の機関で、ワクチンの研究開発が進められている。IIBRで研究開発中のワクチンは臨床試験段階にあるが、実用化には至っていない。今後、今回発表のような国際的に連携した研究開発を進めることにより、自国に必要なワクチンを安定的に確保できる体制の構築を目指すものとみられる。
(注)ワクチン接種者に対して「グリーン・パスポート」を交付し、イベント会場や文化施設、飲食店などへの入場を可能にする施策を3月7日から開始したが、「グリーン・パスポート」の有効期限は交付から6カ月間とされている。
(吉田暢)
(イスラエル、オーストリア、デンマーク)
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