米テキサス大停電、バイデン大統領が大規模災害宣言、州内では責任追及本格化
(米国)
ヒューストン発
2021年02月22日
米国のジョー・バイデン大統領は2月19日、寒波被害にあったテキサス州(2021年2月16日記事参照)に大規模災害を宣言した。同州77郡を対象に、連邦政府が住宅補修にかかる補助や無保険の損害に対する低利融資を行う。グレッグ・アボット州知事は翌20日、バイデン大統領の支援に謝意を示すと同時に、さらに州内全254郡の支援対象指定を連邦政府に働きかけていくとした。連邦支援希望者はこちらから既に申請が可能。
一方、州政府は400万件以上に上った大停電を受けて緊急措置を発令し、州内9割の電力系統運用を行う機関「アーコット」(ERCOT)への批判を強めている。寒波襲来の5日前に、アーコットが州政府に、発電設備は寒波に備えているなどと説明していたことを受け、アボット知事は「全ての対策が失敗だった」と批判した。ケン・パクストン州司法長官は19日、アーコットや発電、送配電事業者に今回の停電に関する関係機関間の通信記録などを3月15日までに提出するよう求めた。
アボット知事は州議会に対し、アーコット改革に関する緊急討議や、発電所の凍結防止対策の義務付け、発電事業者への対策費の手当を求めている。州議会は2月25日にも、停電の要因やアーコットの対応を審議する予定だ。
テキサス州では2011年2月にも、寒波の影響で320万件を対象に輪番停電が実施された。連邦エネルギー規制委員会は同年8月の報告書で、1989年の停電で州政府が発電所の凍結防止策を勧奨したものの教訓が生かされなかったと指摘。例年の電力ピーク需要を迎える夏季同様、規制当局やアーコット、電力事業者らが冬季にも万全の備えを行うことや、発電事業者による凍結防止用断熱材の点検の徹底など再度勧奨していた。
テキサス大学オースティン校エネルギー研究所リサーチフェローのデーブ・タトル氏は、2011年の勧奨が実行されていれば、州民の多くは暖を取れたはずだと指摘している(「USAトゥデー」紙2月19日)。
アーコットが州外の電力系統との接続を制限し、テキサス独自の系統を維持している点も注目されている。連邦規制の影響を受けない一方、今回のような危機時に電力の融通が利かないもろさもはらんでおり、ダラス市のエリック・ジョンソン市長は州外系統との接続の検討も必要と述べている。これ以外にも、ピーク需要が減る冬季に発電所が点検のため稼働を休止しているという季節要因のほか、自由化が進んだテキサス州の電力市場ではコスト削減を図る電力事業者がまれな寒波に対応する設備投資の判断をしづらいことや、電力事業者に余剰の電力供給力の確保を求めないテキサス市場の特徴など、停電の背景をめぐりさまざまな論点がメディアをにぎわしている。
寒波の影響は、再生可能エネルギー導入論議にも飛び火した。2月16日、アボット知事は保守系FOXニュースで、グリーン・ニューディールは危険であり、今回、風力や太陽光による発電が州横断の電力不足をもたらしたとの見解を述べ、10年以内に発電源を全量クリーンエネルギーに転換するなどの「グリーン・ニューディール」を掲げるアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州)など民主党を中心に反発が広がった。
アボット知事は2月17日の会見で、影響を受けているのは州内の全ての発電源だとした上で、「明確にしたかったのは、グリーンエネルギーのみに依存するのは危険ということだ」と真意を説明している。アーコット幹部は17日時点で、供給不足電力4万6,000メガワットのうち、61%が石炭・ガス火力発電および原子力発電、39%が風力・太陽光発電によるとしている。
(桜内政大)
(米国)
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