G7首脳、国際協調を鮮明に、ワクチン普及に75億ドル拠出

(英国、世界)

ロンドン発

2021年02月22日

日米欧の主要7カ国(G7)は2月19日、オンラインで首脳会議を開催した。会議後の首脳声明では、「新型コロナウイルスに打ち勝ち、より良い回復のために協働することを決意」するとともに、「2021年を多国間主義のための転換点」とすることを宣言(添付資料表1参照)。米政権交代で機運が高まる国際協調路線が前面に打ち出された。会議は2021年にG7議長国を務める英国のボリス・ジョンソン首相が議長を務め、日本の菅義偉首相、米国のジョー・バイデン大統領、イタリアのマリオ・ドラギ首相は初参加となった。

G7首脳は、新型コロナウイルス対策について、公平なワクチンの調達、分配などを目指す国際枠組み「ACTアクセラレータ」とワクチン共同購入枠組み「COVAX」を通じた国際支援を確約。G7全体で75億ドルを拠出することを明らかにした(注)。首脳はまた、米国が脱退を撤回した世界保健機関(WHO)との協力を強化し、ワクチン生産能力の拡大や変異株に関するブラック ジャック ルール ディーラー共有などを進めることも確認。さらにアフリカなど開発途上国への支援も重視し、財政が悪化した途上国にはG20の債務支払猶予イニシアチブ(DSSI)と、DSSIの後の債務返済に関する「共通枠組み」に基づく支援を徹底することで一致した。

国際通商体制で中国を牽制

気候変動対策や国際通商体制の強化なども議論された。首脳声明では、2050年までの二酸化炭素純排出ゼロに向け、クリーン・エネルギーへの転換などで排出量削減や雇用創出を図ることを明言。通商面では、WTO改革やルールに基づく多角的貿易体制の推進にむけ協力することで一致した。また「非市場志向型の政策や慣行」にはG7一体で対処するとして、中国などを牽制している。首相声明の締めくくりでは、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催で日本の支持を明記した。

英国政府は今回の首脳会議に先立ち、新型コロナウイルス対策への貢献として、将来のワクチン余剰分の過半数をCOVAXに提供することを確約。また、WHOなどと協働してワクチン開発期間を現在の3分の1の100日に短縮することや、将来のパンデミック防止のため国際条約を模索する考えも明らかにした(添付資料表2参照)。これらはジョンソン首相が2020年9月の第75回国連総会演説で提唱した、世界的保健危機防止のための「5つのポイント」(添付資料表3参照)を受けたもので、首相はG7議長国である2021年を通じて、これらの取り組みを進める意欲を示している。

(注)米国はCOVAXに20億ドルと追加的に20億ドルの支援を約束。EUも拠出額を5億ユーロから10億ユーロに倍増する。日本は2月9日、茂木敏充外相がCOVAXへの拠出を倍増させ、2億ドルの拠出を表明している。

(宮崎拓)

(英国、世界)

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