大統領選挙で現職ソウザ氏再選
(ポルトガル)
マドリード発
2021年02月04日
1月24日に実施されたポルトガル大統領選挙で、中道右派の野党・社会民主党(PSD)に所属するマルセロ・レベロ・デ・ソウザ大統領が1976年の民政移行後3番目に高い得票率(60.7%)で再選した(添付資料表参照)。今回の選挙は、新型コロナウイルスの感染者急増で厳しいロックダウン中に実施されたこともあり、投票率は39.5%(前回は48.7%)と史上最低だった。
ポルトガルでは、国家元首の大統領は象徴的な存在で、内閣提案に対する追認・否認権や、首相、閣僚、政府の提案した検事総長や会計監査院長の任命権・解任権を持つが、政治の実権は首相が握る。ただし、条件付きではあるが、議会解散の権限を持ち、政権交代に一定の影響力を及ぼすこともある。
与党も右派のソウザ大統領続投を支持
大統領選で2位のアナ・ゴメス氏の得票率は13.0%と、ソウザ大統領に大きく差を付けられた。同氏が社会党の公認候補として立候補することができなかったことによるとみられる。ソウザ大統領は右派だが、与党・社会党の政策に協力してきたことから、中道左派のアントニオ・コスタ首相とは良好な関係を築いており、社会党内の多数派の中道派は同大統領を支持したとされている。同じ社会党のゴメス氏を支持したのはソウザ大統領不支持を表明する党内左派勢力のみだった(「オブセルバドール」紙1月25日)。
左右とも新興野党が健闘
2019年に結党した新興極右・保守党(Chega)のアンドレ・ベントゥーラ党首は、得票率11.9%で3位に躍進した。4位の共産党のジョアン・フェレイラ氏は、党の存在感を示す目的で立候補し、得票率は4.3%で2016年の前回選挙時の同党候補者の得票率(4.0%)よりも高かった。積極的な選挙運動が奏功したとみられる。最大の敗者は、前回選挙で10.1%を獲得していたにもかかわらず、今回は社会党のゴメス候補と票を取り合うかたちになって4.0%と得票を大きく落とした左翼連合(BE)のマリサ・マティアス氏と報じられた。また、保守リベラル党の公認を受けたティアーゴ・マヤン・ゴンサルべス氏の得票率は3.2%だったが、2019年の総選挙で同党が獲得した得票率の2倍超となった。
再選のソウザ大統領は、新型コロナウイルスにより悪化している社会・経済状況の改善や、EU理事会(閣僚理事会)の2021年上半期の議長国としての責務を果たす決意を示した。
(小野恵美)
(ポルトガル)
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