半導体供給不足で北米の自動車産業への影響懸念、一部に生産停止も
(米国、カナダ、メキシコ)
ニューヨーク発
2021年02月09日
半導体チップの世界的な供給不足が自動車産業にも大きな影響を与えている。英国調査会社IHSマークイットは2月2日、半導体チップの不足により、世界における乗用車と小型トラックの生産台数は2021年第1四半期(1~3月)で67万2,000台分消失し、うち米国とカナダ、メキシコを含む北米では約10万台分失われるとの調査報告を発表した。同社はまた「今回の問題はOEMからの需要が増加する一方で、半導体の供給が限定的であることに起因しており、双方の需給が一致するまで解決されない」とし、供給の回復は早くて2021年第3四半期(7~9月)になるとの見方も示した。
なお、別の調査機関オートフォーキャスト・ソリューションズによると、半導体チップ不足により既に世界で合計56万4,000台の生産が失われ、2021年通年では合計96万4,000台に上るとの予測を立てている(ロイター2月3日)。
半導体チップの不足は既に米国での自動車の生産態勢にも影響を与えている。自動車専門メディアによると、半導体チップ不足を背景に、フォードが2月8日の週に全米販売台数首位のピックアップトラック「F-150」を生産するミシガン州ディアボーンのトラック工場での生産態勢を3シフトから1シフトに変更するほか、ミズーリ州のカンザスシティ組み立て工場でも3シフトから2シフトに減少させて対応する(オートモーティブニュース2月4日)。ゼネラルモーターズ(GM)も同じ週に、カンザス州フェアファックス、カナダのオンタリオ州インガソール、メキシコのサンルイスポトシ工場での生産を完全に停止する(同2月3日)。ステランティス(旧フィアット・クライスラー・オートモービルズ)のカナダのオンタリオ工場での3週間の生産停止や、日系メーカーへの影響も報じられている(同2月4日)。
今回の供給不足の要因に関し、業界団体の米半導体産業協会(SIA)は2月4日、独自の調査報告書の中で、2020年の第2四半期(4~6月)に新型コロナウイルスのパンデミックにより自動車メーカーが車両生産とチップ購入を減らした一方で、在宅勤務や遠隔医療、オンライン学習の機会の増加に伴って半導体の需要が急増。その後、経済活動の再開とともに自動車の需要が回復したことで需給バランスが崩れたと説明した。また、投資税額控除などを通じてチップの国内製造を強化する取り組みを強く支持するとし、バイデン政権と連邦議会の協力を呼び掛け、米国内でのチップ製造と研究強化への支援を求めた。
米上院では、多数党院内総務のチャック・シューマー議員(民主党、ニューヨーク州)や共和党のジョン・コーニン議員(テキサス州)のほか、ミシガン州、オハイオ州など主要な自動車州を代表する15人の議員によるグループが2月2日、ホワイトハウスに書簡を提出した。その中で議員らは「世界的な半導体チップの供給不足がパンデミック後の景気回復を脅かしている」と警告し、国防授権法における半導体関連の規定を迅速に実施するため、必要な予算確保に対する政府の支援を要請した。
(大原典子)
(米国、カナダ、メキシコ)
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