欧州委、バッテリー供給体制を強化する国家補助を承認
(EU)
ブリュッセル発
2021年01月28日
欧州委員会は1月26日、12のEU加盟国が共同で申請したバッテリーの研究開発プロジェクト「欧州バッテリー・イノベーション」に対する、最大で総額29億ユーロの国家補助を承認した。ドイツが中心となり、オーストリア、ベルギー、クロアチア、フィンランド、フランス、ギリシャ、イタリア、ポーランド、スロバキア、スペイン、スウェーデンの計12カ国が、バッテリーの原材料から部品・製品、リサイクルまでのバリューチェーンに関わる、42の企業が実施する計46の研究開発プロジェクトに対し、2028年にかけて補助を行う。欧州委は、今回の国家補助を活用してプロジェクトが推進されることにより、90億ユーロの民間投資が生み出されると試算する。
EUの国家補助ルールでは、2014年の「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)に関する政策文書」に基づき、イノベーションの必要な重点産業への複数の加盟国による共同支援を可能としている。バッテリー産業では、2019年12月にも7カ国による国家補助が承認されており()、今回が第2弾となる。
「欧州バッテリー同盟」の順調な成果を強調
42社にはドイツのBMW、イタリアのフィアットなどを傘下に置くFCA(注)といった域内の自動車大手だけでなく、米国テスラのように本拠地が域外で、EU域内に拠点を置く企業も含まれる。日本企業では、フランスなどに欧州拠点を持つ東海カーボンが参加している。大手企業だけでなく、スペインの電気自動車開発・製造企業リトル・エレクトリック・カーズや、電気自動車用蓄電池の開発・製造を行うオーストリアのVOLTLABORのような中小企業も名を連ねる。
EUは2017年10月、産業界や関係機関などが広く参加するイニシアチブ「欧州バッテリー同盟(EBA)」を立ち上げ、域内のバッテリー産業への投資誘導を図ってきた()。同イニシアチブを牽引してきた欧州委のマレシュ・シェフチョビチ副委員長(EU機構関係・将来予測担当)は「わずか3年前、EUのバッテリー産業は世界的にはほとんど存在感がなかったが、EBAの活動を通じて、欧州はバッテリー投資の世界的なホットスポットとして注目されるようになった。われわれは2025年までに、少なくとも毎年600万台の電気自動車にバッテリーを供給できる体制を築く」とEBAの成果を強調し、今回の国家補助はEBAを一層加速させると説明した。国家補助の対象には、EBAを通じて投資を拡大してきたスウェーデンのノースボルト(関連ブラック ジャック 勝率)も含まれている。
(注)FCAは2021年1月16日にグループPSAと合併し、新会社ステランティスを設立している。
(安田啓)
(EU)
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