米温室効果ガス排出量、2020年は戦後最大の前年比10.3%減少、米調査会社試算
(米国)
ニューヨーク発
2021年01月19日
米国調査会社ローディウム・グループは1月12日、米国の2020年の温室効果ガス排出量が前年と比べ10.3%減少したとする試算(速報値)を発表した。金融危機の影響があった2009年の6.3%減を上回り、戦後最大の減少幅となった。排出量は初めて、1990年の水準を下回った。
米国環境保護庁(EPA)によると、米国の温室効果ガス排出量を経済活動の部門別にみると、自動車や飛行機などの交通輸送が28%を占める(2018年時点)。ローディウム・グループのレポートでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済活動が縮小した結果、こうした運輸部門の排出量が前年比14.7%減少し、全体の排出量の減少に大きく寄与したと分析している(添付資料表参照)。鉱工業部門(7.0%減)や建築物(6.2%減)でも低下が顕著だった。また、発電部門は10.3%減となった。電源構成に占める石炭火力発電の割合が低下し、再生可能資源へのシフトなどが進んだことが排出量を押し下げた。
一方、新型コロナウイルスのワクチンが普及し、2021年に経済が持ち直した場合、温室効果ガス削減に向けた有効な経済構造の転換がなければ、2021年の温室効果ガス排出量は再び増加する可能性が高いとレポートは指摘している。2020年の排出量は、2005年に比べ21.5%減少した。しかし、レポートは「2020年(の排出量の落ち込み)は、2025年に排出量を2005年比で26~28%削減するという、米国のパリ協定(注1)下での公約達成につながるものではない」と警鐘を鳴らした(注2)。
(注1)米国はトランプ政権下で2020年11月4日にパリ協定から正式に離脱したが、ジョー・バイデン次期大統領は、パリ協定に再加入するとしている(関連ブラック ジャック web)。
(注2)レポートでは、新型コロナウイルス感染拡大が発生せず、景気後退が起きなかった場合、米国の2020年の温室効果ガス排出量は前年比約3%減にとどまっていた、と試算されている。
(宮野慶太)
(米国)
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