商務省、RCEP協定の最大限の活用を産業界に呼びかけ
(タイ、ASEAN)
バンコク発
2021年01月18日
タイ商務省貿易交渉局(DTN)のオラモン局長は1月4日、同国が2021年半ばまでに批准を目指す東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定について、最大限活用するようタイ産業界に対して準備を促した(DTN発表)。
オラモン局長によると、RCEP域内のGDP総額、総人口は世界の約3割のシェアを占め、タイの輸出総額のうち約6割をRCEP15カ国向けが占める。RCEP協定のメリットとして、ASEANが日本や中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドとそれぞれ締結しているASEAN+1FTA(自由貿易協定)に比べて、原産地規則(ROO)が満たしやすい点がある。RCEP域内では企業のサプライチェーンが複雑に構築されているが、15カ国いずれの原材料を使っても「メード・イン・RCEP」として特恵関税を利用できる(注1)。また、以下のように、既存のFTAに比べてRCEPの方がタイの輸出業者にとって利用しやすい可能性がある。
- 飼料用調製品など、日ASEAN(AJCEP)やASEAN韓国(AKFTA)では付加価値基準(注2)でしかROOを満たせなかった物品について、RCEP協定では関税分類変更基準(注3)も認められている。
- 輸出用食料調整品など、AJCEPやAKFTAでは締結国産以外の肉や水産品などを使うとROOを満たせなかったが、RCEP協定では域外の原材料を利用しても、生産工程を経ることでRCEP原産品として輸出できる。
また、RCEP協定は全タリフラインに品目別原産地規則(PSR)を設けており、各品目の生産工程に適したROOを設定している。これまでPSRがない品目は一般規則に従う必要があり、ROOを満たしにくいケースがあった。
RCEP協定では税関手続きの簡素化や透明性を高める措置が約束されており、急送貨物は6時間以内、一般貨物は48時間以内の引き取り許可を規定している。貨物の到着前手続き処理(Pre-Arrival Processing)も電子申請できることが約束されている。オラモン局長は「企業が効率的にビジネスを行う上で大きな恩恵がある」と述べている。
(注1)ただし、累積規定や品目別原産地規則(PSR)などのROOを満たすことが必要。
(注2)産品の原産資格割合を算出し、一定の基準値を超えるか否かによって、原産性を判断する方式。経済産業省資料参照。
(注3)最終産品と使用した非原産材料・部品との間で関税分類が変更されている場合、原産品と認める方式。
(シリンポーン・パックピンペット、北見創)
(タイ、ASEAN)
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