イタリア産業界、EU・英国間の協定合意に安堵とともに懸念の声も
(イタリア、英国)
ミラノ発
2021年01月06日
EUと英国間で12月24日に通商・協力協定の合意に至ったことを受け、イタリアのジュゼッペ・コンテ首相は同日、ツイッター上で「良い知らせだ」と歓迎。「欧州の企業や人々の利益と権利は守られた」とし、「英国はEUとイタリアにとって中心的なパートナーであり、同盟国となる」と前向きな姿勢を示した。英国のEU離脱に伴う移行期間の終了直前まで不透明な情勢が続いた中、無事に交渉が合意に達したことを受け、在英イタリア商工会議所も12月25日に「1,246ページにおよぶ文書(協定書)は、トラウマ的な『ノー・ディール(合意なき離脱)』の悪夢を退けた」と評価するアレッサンドロ・ベッルッツォ会頭のコメントを発表した。
イタリアのシンクタンクの国際政治研究所(ISPI)が発表したレポート(注)によると、イタリアは他の主要なEU加盟国に比べると、輸出全体に占める英国向けの割合が低いため、協定なしで移行期間が終了した場合でも影響は比較的少なかっただろうと指摘。ただ、英国向け輸出は5番目に大きい点も挙げ、重要な貿易相手国の1つであることを示唆している。
実際、英国が主要な輸出先となっている食品セクターからは、貿易協定不在のまま移行期間終了となる事態が回避されたことに対し、安堵(あんど)とともに、懸念の声も聞かれる。農業経営者団体コルディレッティ(Coldiretti)は12月24日、協定合意を受けてプレスリリースを発表。英国は食品分野でドイツ、フランス、米国に次ぐ4番目の主要輸出先であり、今回の合意によって「メード・イン・イタリー」の輸出産品に対する打撃は回避されたとして、結果を歓迎した。農業組合コンファグリコルトゥーラ(Confagricoltura)は12月30日、合意によって関税や割り当てが回避されたことを評価しつつも、今後、EUと英国の間で通関手続きが発生することにより、事業者は4%から10%の追加的なコストに耐える必要があるだろうと注意を喚起している。
(注)2020年12月24日発表。
(山崎杏奈)
(イタリア、英国)
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