2030年までの温室効果ガス68%削減を発表

(英国)

ロンドン発

2020年12月07日

英国のボリス・ジョンソン首相は12月4日、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を1990年比で少なくとも68%削減するという野心的な目標を新たに設定すると発表した。今回の削減目標は、気候変動への取り組みをさらに進める必要性があるという認識の下、これまでの目標の53%削減から引き上げられ、世界で最も高い目標かつ主要国で最も早く排出量を削減するものとなっている。

この目標達成への道は、2030年までに最大25万人の雇用を創出する「グリーン産業革命」()によって支えられている。この計画は、2030年までに400億ポンド(約5兆5,600億円、1ポンド=約139円)の民間投資を行うことで、革新的な技術を開発し、エネルギー、輸送、建物のGHG排出量を大幅に削減することを目指すものだ。

英国は、2050年までにGHGの純排出をゼロにする(注)目標を法制化した最初の主要国で、政府によれば、過去10年間で他の先進国と比べて最も多くの炭素排出量を削減しているという。今回の新たな削減目標は、パリ協定5周年に当たる2020年12月12日に、国連、英国、フランスの共催で、オンラインで行われる国連気候変動サミットに先立ち、発表された。同サミットでは、2021年に開催される国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26、開催地:英国グラスゴー)に向けて、世界中の国々に野心的な削減目標や気候計画を提出するよう呼び掛けている。

アロク・シャーマ ビジネス・エネルギー・産業戦略相は「英国の新しい排出量削減目標は世界で最も高いものの1つで、地球が直面している課題の緊急性を反映している。来週の国連気候変動サミットで、そして来年グラスゴーで開催されるCOP26に先立ち、他の国々も賛同し、削減目標を引き上げることを願っている」と述べた。

政府の発表に対して、複数の主要企業からコメントがあった。英国の電力、ガス事業大手SSEのアリスター・フィリップス・デイビス最高経営責任者は「今回、政府による目標の設定は、世界で最も野心的なものの1つで、目標実現に向けて政府と協力していきたい。当社はドッガーバンクに世界最大の洋上風力発電所を建設するなど、低炭素プログラムに75億ポンド投資しており、来年のCOP26に向けて、英国の国際的リーダーシップを示すためにもさらに努力したい」と述べた。

(注)人間の活動によって排出されるGHGの量を森林などで吸収されるレベルにまで抑えること。

(宮口祐貴)

(英国)

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