バイデン氏、米USTR代表候補に通商弁護士のタイ氏を指名
(米国)
ニューヨーク発
2020年12月14日
米国の次期大統領就任が確実なジョー・バイデン前副大統領は12月10日、米国通商代表部(USTR)代表をはじめとする次期政権の要職人事案を発表し、11日に記者発表を行った。USTR代表には、対中通商政策に詳しいとされるキャサリン・タイ下院歳入委員会通商担当首席法務官(民主党側)を指名した。上院で承認された場合、多国間主義・同盟国重視を強調するバイデン氏の下、トランプ政権下で緊張した米中関係をはじめとする通商政策をどうかじ取りするか注目される。
バイデン氏は記者発表でタイ氏について、「議会では両党の議員の間を取り持ち、労働組合と産業界の関係も調整できる」とその手腕を評価し、オバマ政権時にUSTRで中国を担当した経験に触れて、「中国による不公正な貿易慣行はバイデン・ハリス政権でも主要な優先課題となる」と述べた。また、通商政策に関してより戦略的になる必要があるとの見解を示し、通商は経済政策・外交政策の重要な柱になると、今後の政策立案・運営に向けた意気込みを示した。タイ氏はUSTR在籍時に、WTOで米国を代表して中国を提訴した自らの経験に言及し、「誇りとともに重責を感じる。通商政策は国内政策や外交政策と同様にそれ自体で完結するものではなく、人々のために希望と機会を創出する手段だ」とし、米国民の人間性と尊厳を中核に据えたアプローチを取っていくと発言した。タイ氏は下院歳入委員会通商担当首席法務官として、トランプ政権と議会民主党との間での米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に関する交渉の際に手腕を発揮したとされる。また、オバマ政権下の2007~2014年にはUSTRの法務官を務め、その後半ではWTOでの米中間の紛争に関する責任者を務めていた。
リチャード・ニール下院歳入委員長(民主党、マサチューセッツ州)が「(トランプ政権時に)世界中の友好国との傷ついた関係を修復し、中国からの脅威に満ちた挑戦に対抗する上で、タイ氏は国家、国民、国益にとって誇り高く有能な代表となるだろう」との声明を出すなど、早くも民主党議員からは同氏の指名を称賛する声が出ている。トランプ政権で国際経済担当の大統領副補佐官を務めたクリート・ウィレムズ氏は、タイ氏のUSTRでの職歴に触れた上で、「WTOにおける対中提訴での勝利に加えて、EUや日本などと連携した経験も持ち合わせており、(USTR代表就任後も)同様のアプローチを採るだろう」と見通しを述べている(NBCニュース12月10日)。
今回発表されたその他の要職ポストは、農務長官、住宅・都市開発長官、退役軍人長官、国内政策会議委員長。住宅・都市開発長官候補に指名されたマルシア・ファッジ下院議員(民主党、オハイオ州)以外はいずれもオバマ政権での要職経験者となる(添付資料表参照)。
(磯部真一)
(米国)
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