上下両院選挙で野党・社会民主党が勝利、新党AURも躍進
(ルーマニア)
ブカレスト発
2020年12月17日
ルーマニアでは12月6日、上下両院選挙が行われ、最大野党の社会民主党(PSD)が両院とも約30%の投票を得て、ルドビク・オルバン首相率いる現与党の国民自由党(PNL)を抑え、第1党の地位を維持した。
12月10日発表の中央選挙管理委員会の最終結果によると、上院の投票結果はPSDが29.32%、PNLが25.58%、ルーマニア救出同盟・自由統一連帯党(USR PLUS)が15.86%、ルーマニア統一同盟(AUR)が9.17%、ハンガリー人民主同盟(UDMR)が5.89%、などとなった。また、下院ではPSDが28.90%、PNLが25.19%、USR PLUSが15.37%、AURが9.08%、UDMRが5.74%、などという結果になった(添付資料表参照)。なお10月の統一地方選ではPNLが勝利していた(2020年10月16日記事参照)。
今回の選挙における争点として、PSDは年金と給与の増加、高齢者のためのコミュニティセンターの設立などを訴えた。一方、PNLは輸送インフラや病院の整備、より多くの欧州基金の確保などを訴えたが、PSDの得票を上回ることはできなかった。今回の選挙で特徴的だったのは、2019年1月に設立された新党・ルーマニア統一同盟(AUR)の躍進だ。AURは、マニフェストの1つにモルドバ共和国との統合を掲げ、ソーシャルメディアを主なプラットフォームとして選挙戦に臨んだ。AURが両院で9%程度と比較的多数の支持を得たことは、国内メディアでも驚きをもって報じられている(「ルーマニア・インサイダー」12月7日)。
投票率については、有権者登録されている1,896万4,642人のうち、投票者数は605万9,113人で31.95%だった。これは、前回(2016年)の39.49%を大幅に下回っており、今回の上下両院選挙への国民の関心の低さが浮き彫りとなっている。今回は選挙戦自体が今一つ盛り上がりに欠け、特に若年層の投票率が低かった。
オルバン首相は12月7日、今回の選挙結果を受けて引責辞任したが、辞任会見ではPNLは自身の辞任後も、PSD以外の政党との連立政権樹立を視野に入れて、新たな政府づくりに着手する、と述べた。
なお、PSDが勝利した一方、PNL出身のクラウス・ヨハニス大統領はオルバン首相の辞任を受けて、暫定首相として無所属のイオネル・ニコラエ・チュカ国防相を任命した。ルーマニアでは、大統領が首相の任命権を持つ。
(ミンドル・ユニアナ)
(ルーマニア)
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