英EU交渉期限迎え両首脳が電話協議、さらに交渉継続へ
(英国、EU)
ロンドン発
2020年12月14日
英国とEUの将来関係交渉の期限とした12月13日昼過ぎ(2020年12月10日記事参照)、英国のボリス・ジョンソン首相と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は電話協議の後、共同声明を発表した。両首脳は交渉は合意に至らなかった一方で、打ち切りも決定しなかったことを表明。「協議を続け、この大詰めの局面にあっても合意に至ることが可能か見極めるよう、交渉団に指示した」と述べ、交渉続行を明言した。新たな交渉期限は示さなかった。
ジョンソン首相はその後、首相官邸広報を通じて「幾つかの重要な点でいまだ大きな相違がある」と述べ、公正な競争条件(レベルプレイングフィールド)と、漁業、ガバナンスの3分野の対立(英EU交渉が大詰め、ブラック)がなお続いていることを示した。首相はさらに、EUとの間で自由貿易協定(FTA)が成立せずに12月31日までの移行期間の終了を迎える可能性が高いとし、その準備を万全にするよう呼びかけた。
一方で首相は、必要ならEU主要国の首脳と協議する用意があるとし、ドイツのアンゲラ・メルケル首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領との直接対話を提案。首相は先にも同様の提案を投げかけたものの、EU側は欧州委員会が交渉窓口だとして提案を拒否。2019年10月のEU離脱協定合意では、1週間前に行ったアイルランドのレオ・バラッカー首相(当時)との直接協議が合意形成に貢献。今回も首脳との対話で事態打開を目指したいジョンソン首相だが、EUはこれまで、EU加盟国ではなくなった英国とは直接協議に応じないという立場を崩していない。
移行期間終了まで3週間を切ってもなお結論が出ない異例の事態に、経済界のいら立ちは頂点に達しつつある。英国商業会議所(BCC)のアダム・マーシャル事務局長は12月13日、「1月1日からのEUとの通商取り決めの決定を切望している企業にとって、極めて不満」と批判。英国産業連盟(CBI)のトニー・ダンカー事務局長は同日、(1)国境検査などに関するより詳しいガイダンスを企業に対して週内に提供すること、(2)合意の有無にかかわらず、その結果に企業が対応するための猶予期間について合意すること、(3)関税、通関手続き、追加コストなどで短期的に大きな打撃を受ける企業への支援を用意することの3点を政府に要求している。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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