2021年予算案、過去最大の財政出動の一方で増税打ち出す
(スペイン)
マドリード発
2020年11月10日
スペイン政府は10月28日、2021年予算案を下院に提出した。新型コロナウイルス感染拡大で成長・雇用が打撃を受ける中で、社会セーフティーネットの強化と経済産業基盤の変革の指針を示す「歴史的予算」としている。
歳出総額は、前年比19.4%増の5,504億8,400万ユーロと過去最大を記録。ここから国債償還を除いた支出(4,561億ユーロ)も20.1%拡大し、金融危機時をも大幅に上回る規模になった。同予算案には、EU復興基金のうち270億ユーロが前倒しで組み込まれ、その半分以上がグリーン化とデジタル化を軸とする経済対策に計上された。これにより、経済分野の支出は7割近く増加した。
産業強化・エネルギー移行分野(112億ユーロ)では、再生可能エネルギーへの転換、脱炭素化、分散発電、電動化、持続可能な資源利用を奨励するほか、製造業全体でのデジタル化、自動化、インダストリー4.0を加速させる。2020年6月から予算2億5,000万ユーロ規模で導入された乗用車買い替え補助金は、2021年も継続する(基幹企業、ブラック ジャック)。なお、同補助金は、従来の燃料車の購入も補助対象となっている。
観光・商業・中小企業分野(22億ユーロ)では、感染拡大に伴う各種制限の打撃を受けた観光業の競争力向上に13億ユーロを割り当てる。中小企業のビジネス環境整備や競争力向上に4億ユーロを充てるほか、企業の輸出促進・ブラック ジャック アプリ進出支援も強化。また、高速鉄道などのインフラ予算(115億ユーロ)は前年から倍増した。
民間研究開発費(115億ユーロ)も、80%の大幅増となった。うち2億ユーロを、自動車セクターの脱炭素化における中心的技術のバッテリーや水素技術の研究開発に充てる。
「グーグル税」や「砂糖税」の増税で過去最高の税収を見込む
一方、歳入総額は、前年比6.6%増の3,239億9,600万ユーロとなる。政府は、2020年の実質GDP成長率はマイナス11.2%と落ち込むものの2021年は9.8%の回復に転じるとの見通しの下での税収増、また、高所得者・多国籍企業に対する増税や環境税、デジタルサービス税(グーグル税)などの新税の導入、砂糖・甘味料入り飲料の軽減税率(砂糖税)廃止などにより(添付資料表参照)、過去最高の税収(13.0%増の2,221億700万ユーロ)を見込む。また、財政赤字のGDP比は、2020年の11.3%から7.7%に改善する見通しとしている。
スペインでは政治混乱により2018年以降、予算案を成立できずにいたが、今回は「歴史的予算」とあって野党は交渉に前向きだ。政府は2021年1月上旬の成立を目指している。
(伊藤裕規子)
(スペイン)
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