多国間主義と国際協調回帰へ期待、米大統領選結果にメディア、首相は祝意表明
(シンガポール、米国)
シンガポール発
2020年11月12日
シンガポールのリー・シェンロン首相は11月8日、米国大統領選挙で民主党候補のジョー・バイデン前副大統領の当選が確実となったことを受け、祝福のコメントを発表した。同首相は、新型コロナウイルス感染拡大など世界的な危機の克服に向け、バイデン氏のリーダーシップへの期待を示した。また、アジア太平洋地域における米国の強いコミットメントを歓迎し、安全保障やインフラ開発、サイバーセキュリティーなどの分野での2国間協力を深める意向を表明した。
地元紙「ストレーツ・タイムズ」の社説(11月10日)では、トランプ政権が過去4年間で本格的な経済回復を達成しておらず、人種、民族、政治、所得などで国内分断が加速するほか、自国第一主義が世界でさまざまな対立や混乱を引き起こしたとした。また、同盟重視や多国間主義を公約として掲げたバイデン氏が率いる米国が国際社会の望む国際協調主義へ回帰することに期待を示した。
対中政策では、バイデン氏がトランプ政権の関税政策を批判していたことから、一定の米中融和の観測もあるものの、新政権が対中強硬路線を継続するとの見方は変わらないようだ。シンガポール・ビジネス連盟(SBF)のホー・メンキット会頭は、米国では貿易や技術、安全保障面で党派を問わず対中強硬姿勢が取られており、その路線は継続されるが、その方法はWTOなど国際機関を通じたものになると指摘した。さらに、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)への米国の復帰問題は米国内の新型コロナウイルス対策や経済政策、気候変動に比べると優先順位は低いが、世界保健機関(WHO)など国際機関などで重要な役割を果たすことへの期待を示した(同紙11月10日)。
CIMB銀行エコノミストのソン・センウン氏は「今回の大統領選結果は米国社会が分断されていることを示すもので、新政権発足により既存政策がリセットされるわけではない」と述べた。(同紙11月10日)。
(藤江秀樹)
(シンガポール、米国)
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