英国版の一般特恵関税制度を公表、EU制度を継承
(英国)
ロンドン発
2020年11月12日
英国国際通商省は11月10日、開発途上国の産品を輸入する際により低い関税率を適用する一般特恵関税制度(GSP)に関し、EU離脱に伴う移行期間終了後の2021年1月1日から適用する英国版GSPのガイダンスを公表した。対象国や原産地規則など制度の大半はEUの現行GSPを継承。概要は以下のとおり。
- 後発開発途上国枠組み(Least developed countries framework):国連が定める後発開発途上国からの輸入では、武器・弾薬を除く全品目で関税を無税とし、割り当ては設けない。
- 一般枠組み(General Framework):世界銀行が定める低・中所得国、低所得国からの輸入では、繊維製品、機械・部品、食品などの一部の特定品目について、最恵国待遇(MFN)税率「UKグローバルタリフ」より低い優遇税率を適用。
- 拡張枠組み(Enhanced Framework):世界銀行が定める低・中所得国、低所得国のうち、パキスタン、フィリピン、スリランカなど、輸出多角化の不足や国際貿易制度との統合度合いが低いことから経済的に脆弱(ぜいじゃく)な状況にある8カ国からの輸入は、一般枠組みで優遇税率を適用する特定品目について、関税を無税とする。
原産資格を認める作業(operations)など原産地規則は、EUのGSPをそのまま引き継ぐ。また、2国間累積、地域間累積、拡張累積などの累積に関する規定もEUのGSP規定と同様な仕組みとなる。第三国経由の輸入もEUのGSP同様に、経由地の税関の管理下に置かれ、加工などされていなければ、GSP対象国の原産性を認め、優遇税率を適用する。原産性の証明はGSP原産地証明書(Form A)または自己申告で行う。経過措置として2021年中に英国で流通させる産品については、2020年中に作成されたEUの登録輸出事業者システム(REX)の申告文も可。
国際通商省によると、英国が2019年にEUのGSP対象国から輸入した繊維製品・衣料品は約80億ポンド(約1兆1,136億円、1ポンド=約139.2円)、同品目の輸入全体の30%に達し、野菜では約10億ポンド、同品目全体の8%を占める。国際会議などの場では、アフリカ諸国などEUのGSP対象国からは、英国が移行期間終了後に同GSPを継承することを求める声が多数上がっていた。同省は今後、開発途上国支援のため、2021年にも英国GSPを改訂する考えだ。
一方、英国はEUが締結している自由貿易協定(FTA)を継承するため、約40カ国・経済圏と個別の協議を進行。これまで23カ国・経済圏と署名または大筋合意に達している一方、15カ国・経済圏とは協議中だ。また、署名済みでも批准・発効の手続きが間に合わないと、2021年1月1日からFTA税率を適用できなくなる。FTAの継承を目指している国には、エジプト、ガーナ、モロッコ、ベトナムなど22カ国が英国GSPの一般枠組みに含まれており、FTAが継承・発効できない場合は、GSP一般枠組みに基づく優遇税率が適用される。
(宮崎拓)
(英国)
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