自動車の型式認証に関する新EU規則、9月1日から適用開始
(EU)
ブリュッセル発
2020年09月02日
EUにおける自動車の型式認証と市場監視に関する新規則(2018/858)が9月1日から適用開始された。今回の新規則は、既存のEU規制を強化するなど型式認証制度を大幅に改正し、新たに市場監視制度を導入するもの。この背景には、既存のEU規制は加盟国間で実施にばらつきが見られるなど、EU域内での一体的な運用に改善の必要があったことや、欧州自動車最大手のフォルクスワーゲンによる排ガス不正問題(2015年9月25日記事参照)を受け、規制の厳格化の要求が高まっていたことなどがある。また、今回の新規則は、欧州委員会が推進する安全・技術革新・環境に配慮したモビリティー産業政策「Europe on the Move」の一環をなすものだ。
注目は型式認証の強化と市場監視制度の新設など
この新規則の注目点はまず、自動車が市場に出回る前に行われる型式認証の質やその独立性を高めることだ。加盟国の認証当局により指定された検査機関には、検査対象となる自動車の設計・製造・供給などに関与していないことや、金銭の提供を含め外部からのいかなる影響も受けてはならないなどの高い独立性要件が課される(規則第69条)。また、各加盟国間で新規則の実施内容の同一性を担保するために、検査機関が実施する型式認証について、少なくとも5年に1回、他の加盟国の2つの認証当局からの審査を受ける必要がある(第67条)。
型式認証制度を補完するために、既に市場に出回っている自動車に対して関連規制との適合性の検査を行う市場監視制度が新設される。加盟国には市場監視当局を設置し(第6条)、自国市場に出回っている前年の新規登録車4万台につき1台、かつ最低でも5台以上の検査をすることが毎年求められる(第8条)。検査などにより今回のEU規則に適合しない自動車が見つかった場合には、当該車が他の加盟国から型式認証を受けている場合であっても、当該加盟国は市場からの回収などの制限措置を取ることができる(第52条)。
さらに、今回の新規則により、欧州委が独自に新車および登録済みの自動車の検査を実施することとなる(第9条)。検査の結果、当該車が型式認証に適合していない、あるいは不正確なデータに基づき型式認証がなされていたことが判明した場合には、欧州委はEU域内全体で制限措置を取ること(第53条)や、製造業者に対し不適合車1台につき最大3万ユーロの罰金を科すことができる(第85条)。
(吉沼啓介)
(EU)
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