UAEでワクチン緊急接種を認可、「最前線の人々」の保護へ
(アラブ首長国連邦)
ドバイ発
2020年09月24日
アラブ首長国連邦(UAE)の連邦保健・予防省は9月14日、新型コロナウイルス感染者の治療や感染予防などに従事し、本人も罹患(りかん)するリスクの高い「最前線で働く人々」に対して、ワクチンの緊急接種を認可したと発表した。
緊急接種が可能となったのは、UAEで7月から第III相(フェーズ3)の臨床試験が行われている不活化ワクチン(2020年7月22日記事参照)で、既に125の国籍からなる3万1,000人の治験ボランティアに対して接種が行われている。アブドゥルラフマン保健・予防相が、フェーズ3の経過は「非常に良好」としたほか、新型コロナウイルスに関する国家臨床委員会会長のナーワル・アル・カービィ医師は、「接種部の痛み、めまいや軽い頭痛など」の「想定内の副作用」が被験者に認められてはいるものの、緊急時における国際的な保健機関からの発表や、さまざまな科学的な知見から、ワクチンが安全で効果的とする今回の評価を行ったとしている。
現地紙では、9月19日に同保健・予防相に国内最初の緊急接種が行われたことを皮切りに、医療関係者らへの接種が既に開始されているほか、アブダビでは公立学校の教職員とその家族にも、接種の許可が出ている、と報じられている。
このほか、連邦教育省は、ハリーファ連邦大統領令で6月に設置された「フロントライン・ヒーローズ・オフィス」とともに、「最前線の人々」の金銭的な負担を軽減し、その子供たちに質の高い教育へのアクセスを確保するための奨学金制度「Hayyakum(「Welcome」の意)」イニシアチブを実施している(9月16日付国営エミレーツ通信)。既に1,850人が奨学金を受け取っており、9月30日まで追加の申し込みを受け付ける。
同発表によると、「最前線の人々」は医師、看護師、薬剤師などの医療関係者のほか、清掃サービス、予防対策、セキュリティ・緊急対応、殺菌に従事する人なども含んでいる。本イニシアチブは、ムハンマド・アブダビ首長国皇太子の指示の下で実施されており、新型コロナウイルスの影響が長期化する中、対策従事者への保護とインセンティブ確保が急務となっているものとみられる。
(田辺直紀)
(アラブ首長国連邦)
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