移行期間終了後の物流の最悪のシナリオを公表

(英国、EU)

ロンドン発

2020年09月25日

英国政府は9月23日、2020年12月31日の移行期間終了時に起こり得る英国・EU間を移動する貨物の混乱について、想定され得る最悪のシナリオ(Reasonable Worst Case Scenario、RWCS)を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。RWCSはEU加盟国が移行期間の終わりに英国の物品に第三国向けと同様の規制を課すことを想定している。このシナリオによれば、2021年1月1日時点では英国からEUに向かうトラックなどの貨物車両の40~70%が新たに生じるEU側の規制への対応準備ができていない可能性があるとしている。

RWCSには、以下の予想が記載されている。

  • 英仏海峡トンネルや港では、30~50%の貨物車両で国境通過のための適切な準備がなされていない可能性があり、これにより物流が通常の水準の60~80%に低下。
  • 国境手続き不備の貨物車両の滞留により、英仏海峡トンネルが位置するイングランド南東部ケント州で最大7,000台の港行き貨物車両の列ができ、最大2日の遅延が発生。
  • 貨物車両が英国側で滞留することで、EUへ行き製品を輸出するのに遅延が発生するだけでなく、EU側での貨物集荷遅延につながり輸入と輸出の両方で同程度の混乱が発生。
  • 移行期間終了当初、1月の初めの数日は混乱が少ないことが予想されるが、最初の2週間で貨物需要が高まるにつれ混乱が拡大。
  • 2021年の最初の3カ月で対応準備が進み、混乱と物流能力が改善すると想定されるが、フランスが運送業者に対しパスポートチェック手続きを緩和するか、チェック体制を拡充しなければ混乱は継続。
  • 冬の新型コロナウイルス感染拡大で貨物需要が低下し、国境管理の準備不足による物流の混乱が抑制される可能性はあるが、港湾、国境で働く職員の感染防止対策が悪影響を与える可能性も。
  • その他の港の多くでは、適切な書類がない貨物車両は英国での積み込みを拒否すると示唆されている。これによる持続的かつ大きな混乱が発生する可能性は低いものの、行列と遅延に対処するための計画が必要。

政府は、RWCSは何が起こるかを予測する目的ではなく、政府としてリスクに応じた合理的な準備や計画を、責任をもって実施するために使用するとしている。

マイケル・ゴーブ内閣府担当相は声明で「政府は、企業、個人が将来の変化に対応するために必要な支援を行う。既に国境での新たなテクノロジー、インフラ増強、対応人材増員に7億500万ポンド(約958億8,000万円、1ポンド=約136円)を投資している」とし、「通関仲介業者に新たな職員の募集および訓練のための8,000万ポンドを超える助成金を準備するなど、さまざまな対策をとっている」と述べた。また、政府は主に初めて輸出入手続きを行うことになる国内事業者を対象に通関仲介業者と宅配事業者の一覧外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開、随時更新するなど準備を促している。

(宮口祐貴)

(英国、EU)

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