欧州委、税関の取り締まり強化のための諸政策を公表
(EU)
ブリュッセル発
2020年09月29日
欧州委員会は9月28日、EU加盟国の税関行政の問題点を洗い出し、2025年までに改善につなげるための諸政策をまとめた政策文書「関税同盟行動計画」を公表した。急増する電子商取引や、「コロナ危機」のような非常事態への対応といった現代的課題に対応するとともに、虚偽および過少の申告の取り締まりを強化して関税収入の取りこぼし防止を図ることが目的だ。
EUの独自財源としての関税収入の確保が狙い
理由としては、EUの財政において関税収入が無視できない割合を占めることが挙げられる。パオロ・ジェンティローニ委員(経済担当)によれば、2018年のEUの関税収入は約250億ユーロで、EUの歳入の13%を占める「不可欠な一部」だ。EUが成立を目指す復興パッケージ(2020年9月23日付地域・分析レポート参照)の財源確保のため、独自財源の拡張が急務となっている。他方、欧州委の部局の1つである欧州不正対策局(OLAF)の試算によれば、虚偽および過少の申告により2017~2019年の間に少なくとも27億ユーロの関税および約3億ユーロのアンチダンピング税の取りこぼしがあった。欧州委は、電子商取引には虚偽申告の拡大を助長するリスクがあるとみている。
また、英国のEU関税同盟からの離脱も、EU加盟国税関が対処しなければならない主要な課題だとし、このタイミングで行動計画を発表した一因に挙がっている。
行動計画は大きく分けて4つの要素から構成されている。
- リスク管理の強化:各国税関のデータをEUワイドで収集・管理して虚偽申告や、知的財産権を侵害する製品の流入を防ぎ、また、EU域外国境の弱点や、将来起こり得る危機への課題などを分析する。
- 電子商取引の管理:電子決済サービスやオンライン販売プラットフォーム事業者に対する各種義務を見直し、関税や付加価値税の不正取り締まりを強化する。
- コンプライアンスの徹底:不正行為に対処する法的枠組みを整備し、違法行為に対する制裁の共通化を図る。EUが締結する自由貿易協定(FTA)など特恵関税協定の適切な運用を監視し、迂回行為など各協定の原産地規則を満たさない産品への特恵関税適用を防ぐ。
- EU税関当局の一体的取り組み:加盟国税関間の協力を深め、必要な加盟国に対してはX線機器など最新の税関設備の導入をEU予算から手当てする。将来の危機へ対処するため、加盟国および税関行政に関わるステークホルダーから構成される検討グループを2021年の早期に立ち上げる。
(安田啓)
(EU)
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