医療費削減に向け、かかりつけ医師指定などの対策を提案
(スイス)
ジュネーブ発
2020年09月01日
スイス連邦参事会(内閣)は8月19日の閣議で、健康保険改革案の実現に向けて国内コンサルテーション(注)を開始することを決定した。このコンサルテーションの期限は11月19日まで。同参事会は、これに先立つ2020年5月20日の閣議で、既に有効署名数を集め国民投票にかけられることが予想されていたキリスト教民主党(PDC)主導のイニシアチブ「社会保険料率を最大10%に」の受け入れを拒否し、間接的対案を国民投票にかけることを発表していた。
今回はその流れを受けたもので、提案されている改革内容は以下のとおり。
- 異なる分野の専門医からなる「提携医療機関ネットワーク」を組成し、シームレスな医療サービス提供を行う。例えば、糖尿病、心疾患、関節変形などの慢性疾患に対してさまざまな専門医が連携することで、無駄のない診療段階ごとの効果的な医療サービス提供が可能となる。
- 重複診療を避けるため、初診時に訪問できる医療機関についてはかかりつけ医師、遠隔医療または提携医療機関ネットワークのいずれかに限定する(緊急診療を除く)。
- イノベーティブな医薬品を取り入れつつも、薬価を抑制できるよう医薬品の価格決定システムを整備し、効能や成果に応じた薬価引き下げ制度を取り入れる。
これらにより、医療保険費用の3%程度、金額にして約10億スイス・フラン(約1,170億円、1フラン=約117円)の医療費削減効果が見込めるとしている。医療費削減については、各国共通の課題で、スイスにおいても2018年3月に医療費算定プロジェクトを含めた価格抑制策を打ち出していたところだ。一方で、初診病院を一元化することについては、医師側の強い反対が予想される。8月18日付の「ル・トン」紙によれば、2012年には同様の統合医療ネットワーク導入構想が76%の大差で否決されており、今回の政府対案に対しても、反対の投票が起こることも想定される。
(注)国内関係機関に対して、政策の是非を問うこと
(和田恭)
(スイス)
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