再生可能エネルギー法(EEG)改正案を閣議決定
(ドイツ)
デュッセルドルフ発
2020年09月30日
ドイツ連邦政府は9月23日、再生可能エネルギー法(EEG)の改正案(EEG Novelle 2021)、および送電網整備に関して詳細を定めた連邦需要計画法の改正案を閣議決定した。ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は今回の改正について、「さらなる気候保護および再生可能エネルギー導入の促進のため、将来に向けて明確なシグナルを送る」と強調、2020年中の法制化を目指すとしている。
今回のEEGの改正案では、2050年までにドイツで発電・消費される電力について気候中立(温室効果ガスの排出実質ゼロ)を達成する目標が初めて法律上で定められている。同時に、2030年までに総電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合を65%まで増やすという目標を達成するため、再生可能エネルギーの具体的な導入計画が示されている。また、再生可能エネルギー価格を引き下げるための対策の導入や、新型コロナウイルス禍で苦しむ産業界が、改正するEEGへの対応によって不利益を被らないことを保証する措置をとり、国民や産業界の負担軽減を図る。さらに、再生可能エネルギーのさらなる拡大に対する、住民の理解を引き続き得ることが重要とし、陸上風力発電所が建設された地域が、財政的にメリットを得られる仕組みを導入する。今後は市場の原理により、再生可能エネルギーの拡大を進める仕組みを構築する方針を示した上で、発電施設の保有者は、EEGによる金銭的支援期間終了後も引き続き、発・売電の優先権を有する(注)ことを確認。また、今回の改正案では、電力市場への直接販売が難しい小規模事業者は、2027年までは配電事業者を通じて販売することも可能とされている。
再生可能エネルギーの拡大に伴い、送電網の拡充も加速する。ドイツでは特に、北部の風力発電所から消費中心地の南部・西部への送電が課題となっている。連邦需要計画法の改正案では、計画・承認手続きの効率化を進めるほか、2030年までの電力網の拡大計画が掲載・更新された。これにより、35の拡大計画が新たに追加され、現行の9つの計画が変更されている。
産業団体からは懐疑的な見方も
国内主要産業団体からは、今回の改正案について、懐疑的な見方が出ている。ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は、手続きがさらに増えるほか、法律上の不透明性が依然として多く含まれるとし、「産業界にとっては失望するもの」と批判するコメントを発表。連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)は、今回の改正案に一定の評価をしつつも、欧州全体の再生可能エネルギー導入目標に適応させるためには、発電所の建設数と入札量を適時かつ柔軟に調整できるような仕組みや、税制や再生可能エネルギー賦課金制度の改革など、さらなる改善が必要、と指摘している。
(注)総発電量が需要を上回る場合でも、優先権があり、発・売電を継続することができる。
(ベアナデット・マイヤー、森悠介)
(ドイツ)
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