欧州委、アップル判決受け公平な税制追求を強調
(EU)
ブリュッセル発
2020年07月16日
欧州委員会のマルグレーテ・ベスタエアー上級副委員長(欧州デジタル化対応総括・競争政策担当)は7月15日、米国アップルのアイルランド拠点に対する追徴課税を求める欧州委の決定を無効とした、同日のEU司法裁判所(一般裁判所:General Court)の判決を受けて、声明を発表した。
域内企業の税の公平な負担を追求
一般裁判所の判決は、アップルのアイルランド拠点2社が1991~2014年に享受していた税制優遇はアイルランドの不当な国家補助に当たるとして、同国に対しアップルへの約130億ユーロの追徴課税を求めた、欧州委競争総局の2016年8月の決定を無効と判断した。判決によれば、欧州委は、アイルランドの措置が域内市場の目的に反してアップルに不当な優位性を付与しているとみなすに当たって、必要な法的要件を示すことを怠った。
ベスタエアー上級副委員長は「欧州委は全ての企業が公平に税を負担すべきという立場を完全に支持する」とし、「今後も、強引な税制対策措置が、EU国家補助ルールに照らして不当な国家補助に該当しないか審査していく」と述べた。また判決においても、競争総局の審査基準そのものが否定されたわけではないとし、政策の方向性に変更がないことを強調した。今回の判決に対しては、「判決内容を精査し、取ることのできる次のステップにつなげる」と、上訴の可能性を示唆した。EU司法裁判所は二審制が採用されており、一般裁判所の判決のうち、法律問題については司法裁判所(Court of Justice)に上訴することができる。
なお同日、欧州委は税制に関する新たなパッケージ提案を発表した。欧州委によれば、同提案はEU域内における税制の公平性を確保し、平準化を図るもの。「税の不正に対し、加盟国がデータや新技術を活用すること」や、「デジタル・プラットフォーム企業に対する税の透明性を高めること」など、デジタル企業に対応した税制を意識した内容となっている。ただし、デジタル企業などへの法人所得税の課税方法そのものを見直す新しい課税制度、いわゆる「デジタル課税」に関する提案は、2020年秋に別途、発表される予定だ。
(安田啓)
(EU)
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