経済・エネルギー省など、次世代電池の研究・生産に3億ユーロ助成

(ドイツ )

ミュンヘン発

2020年07月09日

ドイツ経済・エネルギー省は6月29日、次世代電池サプライチェーン構築に関わる補助の第1弾として、ドイツ南部のバーデン・ビュルテンベルク州に本社があるファルタ(VARTA)の蓄電池生産の拠点拡張に対し、2024年までに総額3億ユーロを助成することを発表した。この3億ユーロには、バーデン・ビュルテンベルク州とバイエルン州からの助成も含まれる。

6月30日には、ファルタ本社があるバーデン・ビュルテンベルク州エルバンゲンで、ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相、ニコル・ホフマイスター・クラウト・バーデン・ビュルテンベルク州経済相、ローラント・バイゲルト・バイエルン州経済省政務次官が参加して式典が開催された。

アルトマイヤー経済相は「ドイツでの蓄電池セル生産の次の段階に弾みをつける。自動車・産業用蓄電池セルの大量生産への一歩を踏み出す」とコメントした。

電気自動車(EV)の付加価値の約4割を占めるとされる蓄電池の研究・生産を欧州、ドイツにとどめることは、同国の産業政策の観点から重要なテーマだ。連邦政府は2030年までに国内で700万から1,000万台のEVを導入することを目指している。

またドイツでは、原子力発電を2022年まで、石炭・褐炭火力発電を2038年までにそれぞれ停止し、再生可能エネルギーの割合をさらに増やすことが決まっている。変動が大きい再生可能エネルギーの調整弁としても、定置用蓄電池は解決策の1つとみられている。

今回のファルタへの助成は、欧州委員会が2019年12月に承認した「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」()の一環となる。このプロジェクトでは、7カ国17のプロジェクト参画企業に対し最大32億ユーロの国家補助が認められる。ドイツからはファルタを含め5社が参画している。

ファルタは1887年創業の蓄電技術に強みを持つ企業だ。1969年にニール・アームストロング飛行士らが月面着陸した際に使用したカメラには、同社製の電池が使われていた。ドイツ国内にはバーデン・ビュルテンベルク州に2カ所、バイエルン州に1カ所の生産拠点を有する。売上高は3億6,270万ユーロ(2019年)、従業員は2,857人(2019年末)。ヘルベルト・シャイン社長は今回の助成について、「当社のリチウムイオン技術をさらに強化し、最新世代の開発を加速、市場に新しい製品を導入する」としている。

(高塚一)

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