USMCAが7月1日に発効、米税関は年末までを準備期間と位置付け
(米国、カナダ、メキシコ)
ニューヨーク発
2020年07月02日
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が7月1日に発効した。自動車・同部品の原産地規則をはじめ、1994年から続いた北米自由貿易協定(NAFTA)からルールが大きく変わる分野も出てくる。USMCAの運用を所管することになる米税関・国境保護局(CBP)は、年末までの6カ月間は新ルールの順守に向けて準備する期間と位置付け、厳格な執行は控えるとしている。
米国政府を代表して交渉を主導したロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表は7月1日、新型コロナウイルスからの復興が必要な中、「USMCAの発効により、われわれはその目的に向かい、トランプ大統領による労働者のための通商政策を推進する大きな一歩を踏み出した」との声明を発表した。3カ国の代表的な商工会議所も共同声明の中で、USMCAは北米地域の競争力を強化するものと評価している。一方で、新型コロナウイルスが感染拡大し、経済が落ち込む中で新たなルールを順守することには困難が伴うとも指摘している。
CBPが運用を所管
CBPは6月30日に、米国への輸入時にUSMCAに基づき特恵関税を享受するための手続き上の要点をまとめた最終の実施ガイダンスを発表した。7月1日から12月31日までの6カ月間を「実施の第1段階」と位置付け、その期間中、適切な事例に関してはUSMCAの完全な執行は控え得るとしている。NAFTAと比べて特に厳しくなった自動車(乗用車・小型トラック・大型トラック)輸入が無税になるための原産性証明に関しても、生産者・輸出者・輸入者に対して、域内付加価値割合(RVC)の証明に必要な資料の提出につき12月31日まで猶予を与えるとしている。労働付加価値割合(LVC)と鉄鋼・アルミニウム調達の証明に関しては後日、追加ガイダンスが発表される。
原産地規則に関する詳細なルールに関しては、CBPが7月1日付けの官報で公表した(注1)。CBPはまた、特設ウェブページやUSMCAセンター(米税関国境保護局、USMCAセンターを開設、ブラック)を通じて、円滑な運用を支援していくとしている。
労働省がLVCの認定と労働問題のモニタリングを担当
自動車輸入がUSMCAで無税扱いになるには新たに、時給16ドル以上の工場などにおける付加価値が、自動車価格全体の一定割合に達することも求められる(注2)。労働付加価値割合(LVC)という概念で、米国では労働省が認定を行う。労働省は7月1日に、LVCの計算方法などに関する規則を官報で公表した(注3)。
また、労働省はUSMCAで強化された加盟国における労働基準の順守状況を監視する役割も負う。同省ウェブページでUSMCAの労働条項の要点を解説するとともに、匿名で労働問題を報告できるホットラインも設立している。米国の議会、労働組合はメキシコでの労働問題に懸念を示しており、USTRも問題が見つかればUSMCAの紛争解決手続きを活用するとしている。
(注1)発表と同時に有効となっているが、8月31日まで連邦ポータルサイト(ドケット番号USCBP-2020-0036)でパブリックコメントを受け付けている。
(注2)乗用車は発効年に30%で、発効4年目までに40%まで引き上げる必要がある。小型・大型トラックは発効年に45%で、それ以降変更はない。
(注3)発表と同時に有効となっているが、8月31日まで連邦ポータルサイト(ドケット番号RIN 1235-AA36)でパブリックコメントを受け付けている。
(磯部真一)
(米国、カナダ、メキシコ)
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