欧州委、加盟国によるエアバス補助金問題の是正を強調

(EU、米国)

ブリュッセル発

2020年07月30日

欧州委員会は7月24日、フランスおよびスペイン政府と航空機大手エアバスが、同政府によるエアバスの航空機開発に対する投資契約を、WTOの裁定に準拠するかたちで修正することで合意したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。欧州委はこれにより、WTOの協定違反は解消されたという立場だ。

EUは長年、米国との間で双方の航空機大手エアバスとボーイングへの補助金をめぐりWTOで争っている。WTOは、2018年にEUとエアバスの同契約の一部をWTO協定違反の補助金に当たると認定し、2019年には米国による年間約75億ドル相当の対EU報復関税を承認した。これを受け米国は2019年10月より大型民間航空機やワイン・チーズなどのEU産品に追加関税を課しており()、2020年6月には対EU報復関税のさらなる拡大を検討している(2020年6月26日記事参照)。一方EUも、米国のボーイングに対する補助金を不当とする2019年のWTOの裁定を受け、米国への対抗措置を検討している(2019年10月21日記事参照)。

EUは米国との早期解決を目指す

欧州委のフィル・ホーガン委員(通商担当)は今回の合意を受け、米国による対EU報復関税の根拠となるWTO協定違反が解消されたとし、「EU産品への不当な関税は認められない。米国は不当な関税を速やかに撤廃すべきだ」とした。欧州委は、米国のボーイングへの補助金に対するEUによる対米国報復関税の規模をWTOが今後承認する見通しであることを踏まえ、米国が報復関税の撤廃を拒否する場合には、対抗措置を講ずる用意があるとする従来の立場を崩していない。しかし、さらなる関税の報復合戦を避けたい欧州委は今回の合意により、先にWTOの協定違反の是正を明確にすることで、対EU報復関税の撤廃や同様の是正措置を改めて米国に求め、航空機大手への補助金をめぐる米国との長年の対立を早期に解決したい考えだ。

また、エアバスも同日声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、米国による関税が「新型コロナウイルス危機」と相まって厳しいビジネス環境をさらに悪化させているとし、エアバスは今回の合意によりWTOの要件に完全に順守しており、「解決に向けたあらゆる手段を講じている」との立場を強調した。

(吉沼啓介)

(EU、米国)

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