最低賃金を引き上げ、2022年7月には10.45ユーロに
(ドイツ)
欧州ロシアCIS課
2020年07月07日
ドイツの最低賃金委員会は6月30日、2021~2022年の法定統一最低賃金引き上げを政府に対して勧告した。引き上げのスケジュールと金額は以下のとおり。なお、現在は1時間当たりの統一最低賃金は9.35ユーロとなっている。
- 2021年1月1日~:9.50ユーロ/時間
- 2021年7月1日~:9.60ユーロ/時間
- 2022年1月1日~:9.82ユーロ/時間
- 2022年7月1日~:10.45ユーロ/時間
最低賃金委員会は、労使双方を代表する委員と、顧問の役割を担う学界からの委員(ただし投票権はない)から構成されており、政府に対して、統一最低賃金の引き上げ幅と時期を勧告する。政府は、これを基に、勧告された時期に、勧告された金額を引き上げる。
労組を代表するシュテファン・カルツェル委員は、これにより、2021年からの2年間で被雇用者の収入は20億ユーロ増えるとし、勧告の内容に満足感を示した。一方、経営を代表するシュテフェン・カンペテル委員は、2021年の引き上げ幅は小規模に抑えられており、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている中小企業が経営を立て直すための時間的猶予を与えるもの、としている。
統一最低賃金の引き上げについては、労使間での隔たりが大きく、早急に12ユーロへの引き上げを目指す労組側は、家計の所得上昇はコロナ危機で減退した個人消費を下支えする、と主張。一方、経営側は、労働コストの上昇が、危機下にある企業への負担を増加させ、雇用減にもつながりかねない、と懸念を示していた。最終的に、賃金上昇の凍結は回避された一方、大幅な上昇は2022年に持ち越された格好となった(「ライニッシェ・ポスト」紙7月2日)。
フーベルトゥス・ハイル労働・社会相は、この勧告を歓迎するコメントを同日に発表、今秋、さらなる最低賃金に関する改革に取り組む意欲を示している。統一最低賃金の引き上げは、閣議決定を経て正式に決定される。
なお、ドイツでは別途、産業・業種ごとの労働協約によって、その産業・業種の最低賃金が定められており、その金額は統一最低賃金を下回ることはできない。
(福井崇泰)
(ドイツ)
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