進む中国ラオス鉄道、鉄道周辺のハード・ソフトインフラの改善が必要
(ラオス)
ビエンチャン発
2020年06月24日
ラオスの首都ビエンチャンから中国国境ボーテンまでの鉄道建設は2021年末の完成を見越して、5月末までに89.4%の進捗となったと報告されている。そのような中、世界銀行は6月2日、中国ラオス鉄道に関する分析レポートを発表し、その鉄道建設から得られる本来の価値を確実にするための政策提言を行った。
本レポートは、鉄道の完成はビエンチャンから中国全土の鉄道網へと接続することになることから、世界や地域のサプライチェーンへとつながり、投資を誘致し雇用創出や経済成長をもたらす可能性があるとする。一方、政策立案者はラオスのビジネスや貿易環境を改善するための大幅な改革を実施し、インフラ投資を促進しコネクティビティの質を向上させなければ、その恩恵を十分に受けることができないとも指摘した。
本レポートは、本鉄道回廊の成功と持続可能性には、まず中国とラオス、中国とASEAN(特にタイ、マレーシア、シンガポール)間の商品輸送を増やし、規模の経済を達成できるかが重要であると指摘する。2016年の中国とタイ、マレーシア、シンガポール間の貿易量は4040万トンだが、うちラオスを経由して陸上輸送されたのは200万トンと全体のわずか5%。今後鉄道を活用することで2030年までに390万トンへ拡大すると試算した。同様に中国とラオスの2016年の貿易量は120万トン、2030年には370万トンに達する可能性があるとした。
これには、1.生産地・消費地への効率的なアクセスを可能とする鉄道とその他の物流インフラ間のコネクティビティの向上、2.鉄道や道路輸送のリンクを確保するための物流セクター育成のための規制改革、3.コスト低減と遅延最小化のための貿易円滑化の実施、が必要であるとした。つまり、鉄道ネットワークの利点を十分に活用するには、駅の荷役設備と、生産地・消費地や空港との間をつなぐ主要道路開発や接続性の確保、複合一貫輸送サービスなどの付加価値サービスを促進するための参入規制の緩和、競争やイノベーションを促進するための投資環境の改善、効率的なトランジットの確立を含む貿易円滑化のための規制や非関税障壁の改善を早急に実施する必要があるとした。そして、これらの政策が十分に実施されれば、輸送コストは昆明と首都ビエンチャン間で40~50%減、昆明からタイのレムチャバン港までタイ国鉄への積み替えで40%以上のコスト削減が期待されると試算した。
今後、鉄道ハードインフラのみならず制度や付随サービスの拡充への取り組みがどのように行われていくのか注目される。
(山田健一郎)
(ラオス)
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