欧州中銀、新型コロナウイルス対策の緊急購入プログラムを大幅に拡大
(EU、ユーロ圏)
デュッセルドルフ発
2020年06月05日
欧州中央銀行(ECB)は6月4日、ドイツ・フランクフルトで開催した政策理事会後の記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大を受けて3月末から7,500億ユーロ規模で実施している「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」(2020年3月19日記事参照)の規模を6,000億ユーロ増やし、総額1兆3,500億ユーロで継続すると発表した。実施期間は、2020年末から少なくとも2021年6月まで延長し、さらに継続する可能性にも含みを持たせた。PEPPを通じて購入し保有する債券・国債の再投資については、少なくとも2022年末まで継続するとした。
ユーロシステムによる債券・国債の購入プログラム(APP:asset purchase programme)については、2019年11月から実施している月額200億ユーロ規模での債券・国債購入のほか、2020年12月末まで実施予定の民間部門を中心とした1,200億ユーロの資産購入を継続する。緩和政策の効果を高めるため、資産購入については、金利の引き上げ開始前まで「必要な限り」継続するとし、APPの下で購入し保有する債券・国債の再投資については、主要政策金利の引き上げ開始以降も必要な限り続ける方針をあらためて示している。
なお、政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)を0.00%、限界貸付ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し、翌日返済)を0.25%、預金ファシリティー金利をマイナス0.50%にそれぞれ据え置くとし、マイナス金利の深掘りは控えた。
ユーロ圏内の経済成長予測を下方修正、2020年はマイナス8.7%に
記者会見に合わせて発表したユーロ圏に関するECBスタッフマクロ経済予測では、2020年の実質GDP成長率を前回(2019年3月)予測値の0.8%からマイナス8.7%に大きく下方修正した一方、2021年は前回予測値の1.3%から5.2%に、2022年は1.4%から3.3%に上方修正した(添付資料表参照)。なお、消費者物価上昇率(HICP)についても、2020年は0.3%、2021年は0.8%、2022年1.3%にそれぞれ前回予想から下方修正している。
今回の経済予測では、不確実性の高さから2つの代替シナリオを提示した。楽観的なシナリオでは、経済的な落ち込みは一時的で、感染拡大防止のための活動制限が早い段階で解除される前提に基づき、2020年の実質GDPは5.9%の減少にとどまり、2021年に急激な回復を実現、2022年までにインフレ率が1.7%に達するとした。一方、感染拡大の再燃により厳しい制限措置が適用される想定に基づく悲観的なシナリオでは、2020年の実質GDPは12.6%落ち込むとし、2022年のインフレ率も0.9%にとどまるとしている。
(ベアナデット・マイヤー、森悠介)
(EU、ユーロ圏)
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