欧州委、貿易投資障壁報告書で保護主義の根深さを指摘
(EU)
ブリュッセル発
2020年06月23日
欧州委員会は6月18日、2019年版「貿易投資障壁報告書」を発表した。同報告書は、欧州企業の通報に基づきEU域外国の貿易投資関連措置の問題点をまとめた年次報告書で、今回が10回目となる。
国境措置の数が内国規制を上回る
報告書によれば、2019年中にサウジアラビア、中国など22カ国・地域が新たに導入した43件の措置により、EU27カ国からの物品輸出約351億ユーロに悪影響がもたらされ、その85%は工業分野が対象となった。件数では2018年(45件)とほぼ同数となり、「保護主義が拡大し、貿易関係において根深い存在となっている」と総評した。
2019年以前から継続する措置も含めると、2019年末時点で有効な域外国の措置の累計は438件で、国別では中国(38件)、ロシア(31件)、インドネシア(25件)、米国(24件)、インド、トルコ(各23件)の順に多かった。2019年中の新たな措置43件では、中国、およびサウジアラビア、レバノンなど中東・地中海沿岸諸国で過半(24件)に達した。
2019年に報告された措置の特徴的な傾向として報告書では、衛生植物検疫措置や関税引き上げ、数量制限措置などを含む国境措置(border measures)が累計数の52%を占め、基準認証、知的財産権、政府調達など内国規制(behind-the-border measures)の割合(43%)を初めて上回ったことを挙げている。この状況について「われわれの貿易パートナーが、保護主義的な目的を達成するために、より幅広く、より露骨な手段に訴えている」ことの現れとの見方を示した。
報告書の構成において「米国の状況」を単独国では唯一「章」として特別に論じている点も、前回2018年版には見られなかった特徴だ。同国による1962年通商拡大法232条に基づくEU産鉄鋼およびアルミニウム製品への追加関税が「大西洋両岸の貿易にプレッシャーをかけ続けている」と指摘したほか、WTOにおいて米国が上級委員会委員の選任を繰り返し妨げている点や、フランスのデジタル課税法案に対する1974年通商法301条調査開始(2019年7月12日記事参照)などへの懸念を表明した。
欧州委のフィル・ホーガン委員(通商担当)は報告書の序文にて、「こうした障壁を除去していくための新たなアプローチが必要」と述べ、近々指名される新設の最高貿易執行責任者(Chief Trade Enforcement Officer)がその任に当たることを説明した。
(安田啓)
(EU)
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