8月導入予定の土地建物税を9割カットへ、不動産業界からはさらなる市場活性化策の要望相次ぐ
(タイ)
バンコク発
2020年06月15日
タイ政府は6月2日の閣議で、土地建物税の2020年度の徴収税率を90%引き下げることを柱とした財務省提案を了承した。同税は2019年に成立した土地建物税法に基づき、コンドミニアムを含む住居・商業用地・農地などの保有者に課されるもので、日本の固定資産税に相当する。8月から税の徴収が行われる予定だが、大幅に徴収額を減額した。
この背景には、2019年4月に導入したローン規制によりタイの不動産市場が停滞していたところに、新型コロナウイルス感染拡大などの影響が加わったことで、市場環境が急速に冷え込んだことが挙げられる。不動産コンサル大手のナイトフランクタイランドによると、1~3月の主要住宅デベロッパー24社の売上高合計は前年同期比29.1%減、利益では43.2%減となった。
一方、不動産業界はさらなる支援策が必要という立場だ。6月5日付の「プラチャチャット」紙によると、タイ不動産協会のチュアンチャイシット会長は政府に対し、(1)ローン規制の一時解除、(2)景気回復まで土地建物税徴収の延期、(3)中小企業の資金流動性の向上策、(4)外国人顧客への不動産購入促進策が必要と述べた。
このうち、外国人顧客に対する不動産購入促進策については、各社からも声が挙がっている。同紙によると、業界8位のノーブルデベロップメントのブサラパーン共同CEO(最高経営責任者)は、一定額以上の不動産を購入した外国人への10年ビザの発給や、土地のリース期間の30年から99年への延長が必要とした。また、業界9位のオリジンプロパティーのチャローンネックCEOは、コンドミニアム法上、外国人が特定の物件の床面積ベースで49%までしか購入できないことに触れ、この規制を物件単位ではなく、行政区画中の総物件数に対する割合で適用すべきと述べた。例えば、バンコク都の特定の区内の総戸数が1万戸とした場合に、区内で合計4,900戸までは外国人が購入可能とするイメージだ。
タイの2017年民商法典(832KB)では、土地のリース期間が30年に定められており、賃借人保護や外資誘致の観点から課題となってきた。また、1999年コンドミニアム法(42KB)では、上述のとおり外国人の物件所有比率を制限している。
(水村竹秀)
(タイ)
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