ハイテク産業集積地の米アリゾナ州フェニックス市周辺で新型コロナウイルス感染者急増

(米国)

ロサンゼルス発

2020年06月25日

米国アリゾナ州の最大都市フェニックス市とその周辺で新型コロナウイルス感染が急速に広がっており、現地日系企業や関係者は注意が必要だ。

同州は新型コロナウイルス感染拡大の影響で落ち込んでいる経済の回復を重視するダグ・デューシー知事(共和党)の主導により、5月上旬から段階的に経済社会活動の再開を進めている(関連ブラック ジャック トランプ)。これまでに製造業をはじめ、小売店や理美容院、レストランなどサービス業の店内営業も再開した。

同州の感染者数は、累計ではニューヨークやカリフォルニアなど人口の多い州と比べると少ない(注)が、6月11~20日の1日当たりの感染者数平均は2,502人に達し、5月上旬(5月1日~10日、362人)と比べて約7倍に増えている。また、6月23日の新規感染者数は3,593人で、テキサス州、カリフォルニア州に次ぐ3番目の多さとなっている。同州の感染者のほとんどがフェニックス市のあるマリコパ郡に集中している。

感染者の急増を受けて、アップルが19日にフェニックス市近隣のチャンドラー市やスカッツデール市の店舗の一時的な閉店を決定するなど、小売店やレストランが自発的に店舗を閉鎖する動きが各紙で報じられている。

デューシー知事は6月11日の会見で、感染者数の急増の理由について「検査実施数の増加によるもの」と述べ、経済社会活動の再開と感染拡大を結びつけるような発言はしなかった。同知事は、州全体でのマスク着用義務を制定していないが、着用の是非については各自治体の状況に応じて対応することを促している。フェニックス市議会は6月20日から外出時のマスクの着用を義務付け、その他の郡や市も対策を進めている。

アリゾナ州にはフェニックス市周辺を中心に、防衛産業や軍事技術と関係性の高い電気・電子産業が集積しており、ボーイング、インテルなどの大手企業も含まれる2018年5月29日付地域・分析レポート参照。日系企業も半導体など電子部品メーカーを中心に進出している。現時点で日系メーカーが工場の稼働を停止するといった動きはみられないが、同州での感染者の急増について日系企業も不安視している。フェニックス市近郊に自動車部品工場を有するある日系メーカーは、安全衛生対策として従業員の体温検査や定期的な除菌作業など徹底して実施しているが、同社工場の所在市から何らかの指示があれば、「どのような内容であれ対応できるよう準備を進めている」と警戒を強めている。

(注)米疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、6月23日時点の累計感染者数はアリゾナ州で5万8,179人、ニューヨーク州で39万894人、カリフォルニア州で18万3,073人となっている。

(浅井康孝)

(米国)

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